お城には王様と、それはそれは若くて美しいお后がおりました。
まるで、お父様と娘のように年が離れておりましたので、お后はガラスでできたお人形のように大切に扱われました。
ところが、お后が赤ちゃんを産むと、そのお姫さまは、あまりにも小さくて儚くて愛おしいものですから、王様は心変わりをしました。
「これまでは、お后がいちばん守ってあげたい儚いものに見えていた。でも、お姫さまと比べると、全然違う。お后はとても大きく見えてしまう。もう愛せない」
そうです。王様の眼には、お后はもう若くもなく、儚くもないのです。
王様は、お姫さまをガラスでできたお人形のように可愛がりました。
しかし、お后には、「良き母親として振る舞いなさい」と、言葉も態度も厳しくなりました。
お姫さまが7歳になるまで、7年間も、お后は不幸でした。
やがて、王様が戦に出掛けて、お城を留守にしました。
今度は、お姫さまを不幸にできるので、お后は幸福を感じました。
お后は、すっかり、王様の気分で、王様にされたように、お姫様を苛めました。
お城の外は、魔法使いの掌る森でした。
森の奥には、湖がありました。呪いを掛けられて白鳥に変えられた王子様がいます。
森は山のほうにも続いています。魔女に呪われて、木の棒に変えられた町の娘がいます。
お后は、お姫さまをお城から追い出して、森へ捨てることに決めました。
たぶん、お姫さまは、魔女の呪いで死んでしまうことでしょう。
お后は、思いつくこともできませんでした。
あと10年後には、お姫さまが、隣のお城の王子様と復讐のために戻って来るなんて。
本当に魔女の呪いで死んでしまうのは、お后のほうでした。
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