参院補選 静岡での結果は「リニア工事の問題」が作用
10/25(月) 11:58配信
65
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月25日放送)に中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が出演。10月24日に投開票された参議院山口選挙区と静岡選挙区の補欠選挙の結果について解説した。
参議院補欠選挙、山口は自民党・北村氏、静岡は立憲民主・国民民主推薦の山﨑氏が当選
走行するリニア中央新幹線の試験車「L0系改良型」=2021年10月8日午後、山梨県都留市 写真提供:産経新聞社
岸田政権発足後、初の国政選挙となった参議院・山口選挙区と静岡選挙区の補欠選挙が10月24日に投開票され、山口選挙区は公明党の推薦を受けた自民党・比例前職の北村経夫さんが3回目の当選。静岡選挙区は、立憲民主党と国民民主党の推薦を受けた無所属の山﨑真之輔さんが初当選した。 飯田)衆院選の前哨戦とも位置付けられていました。1勝1敗と見るか、静岡与党敗退と見るかで、各地の見出しも異なっています。 野村)本当にそうですね。注目は静岡の結果だと思うのですが、静岡について言うと、衆議院議員選挙の野党共闘の枠組みとは少し違い、国民民主党と立憲民主党が組んで、共産党はまた別の候補者を立てている図式になっています。しかし、野党側が勝ったということなので、自民党としては「保守の地盤が強かったはずなのに」という思いがあるはずです。
野村)ただ、この選挙に関しては静岡特有の問題が絡むのです。実は静岡県では知事選挙があって、その際、ある番組の特番で私はゲストコメンテーターとして行ったのですが、そのときの静岡県の様子は、他県の人たちにはなかなかわかりにくい状況がありました。それはリニアの問題についてです。 飯田)リニア中央新幹線ですか? 野村)そうです。リニアの工事の際、大井川の下にトンネルを掘るという計画になっています。山梨の方の富士川や長野県の天竜川などは橋を架けるのに、この大井川だけはトンネルになる。トンネルだと、工事中に大井川の水が湧き出てしまって、それはもう大井川には戻らない。「こんな工事は反対だ」という声が強いのです。
飯田)大井川の水が出てしまうので。 野村)その声を川勝知事が拾って、圧倒的な支持を得たという図式なのです。今回の候補者で当選された山﨑さんという方は、まさに県議会議員として水問題を中心に活動して来た人なのです。ですので、国政レベルの選挙ではあるのですが、静岡にとっての大きな問題が争点の中心にあったということは、他の地域の人たちには見えにくいのではないかと思います。 飯田)JR東海の施工者側も、出た水は基本的に戻すようパイプラインをつくり、全体の流量は減らないように調整すると対策に関しては言っていますが、大井川の存在はそれほど大きいものなのですか?「自分たちにとって大事な川」という精神的な思いもあるのです。私たち日本 野村)生活に影響があるということは否定できないと思いますが、さらには人にとって、富士山は特別な山ではないですか。これを「削ります」と言ったら、「え?」と皆さん一瞬思いますよね。どのような効果があるかという問題以前に、「富士山を削ってはダメだろう」というような思いがあります。
飯田)そうですね。 野村)同じように、自分たちの地域を支えて来た大事な水が放流されてしまうことに対して、精神的な批判がある。しかも静岡にはリニアも止まらず、地下をただ通って行くだけなので、経済効果があるのかと言われると難しい。むしろストロー現象で、名古屋と品川はお互いに発展するかも知れませんが、真ん中にいる県は「ただ犠牲になるだけなのか」というイメージは強いですよね。 飯田)そうすると、「野党共闘が」とか「自民党の支持率が」というような論点で語られることが多いですが、地元の問題というところがこの選挙には作用した。 野村)作用したと思います。先ほども言ったように、野党の枠組みも今回の衆議院選挙の枠組みとは少し違うので、そこも含めてきちんとした分析は必要なのではないでしょうか。