「戦争と女性」でさえ難しいのに、ジェンダーおよび戦争の社会学を専門とする佐藤文香さんは、「戦争と女性兵士」というさらに難しいテーマに向き合い続けている。本書『女性兵士という難問』は、18年前に刊行した前著『軍事組織とジェンダー 自衛隊の女性たち』(慶應義塾大学出版会、2004)以降のさまざまな変化を踏まえつつ書かれたという。
今回のウクライナ侵攻で、軍の組織的な性暴力にかんする報道をよく見かけたように感じたのは、私だけではないと思う。同時に、武装し前線に向かう女性兵士たち(ウクライナ)を、こんなにたくさん目にしたのも初めてだった(SNSの存在も大きい)。言うまでもなく性暴力はあるまじきことだが、非難とともに、彼女たちへのケアはどうなっているのかが気になる。あるいは、自国を侵略され憤る気持ちも当然だが、市民が戦争に加担させられていることに対して、そもそも議論が必要ではないかと思う。長い間、戦争当事者の女性を散々かき消してきたのに、現代になって、どうしてこんなに戦争のなかの女性の存在が明るみに出てくるのか。私には、女性あるいは女性性がとても都合よく、戦略的に使われたように感じられた。 そんな疑問があってこの本を手にした。しかし正直なところ、読後もまだ「女性兵士がどうして難問なの?」と尋ねられたら、自分なりに答えられないところがある。しかしそれでも、そもそも戦争・軍隊には反対だという前提で、なおそれらを「批判的に解剖する」ために、ジェンダーの視点を積極的に持ちたいと思う。
書籍を中心としたグラフィックデザイナーとして、ミニ出版社「牛若丸」を主宰するパブリッシャーとして、そしてデザインにまつわる本を数多く発表してきた著述家として──本を舞台に多彩な活動をされている松田行正さんの最新著は『戦争とデザイン』。松田さんはこれまでにも、ヒトラー関連の『RED』、黒人・黄色人・ユダヤ人差別関連の『HATE!』(ともに左右社)や、スターリンや毛沢東をテーマとした『独裁者のデザイン』(河出書房新社)などの著作によって、
デザインがどのように戦争や差別、支配に作用したのかを検証してきた。 本書は、近代以前から第1次、第2次世界大戦、そして今回のロシアによるウクライナ侵攻を対象に、戦争と「色」「しるし」「ことば」「デザイン」の4章で構成し、執筆された。ロシア軍が今回多用していたシンボル“Z”についても考察している。 まさに、戦争は“デザイン”されている。「権力がデザインやイメージをいかに巧妙に悪用してきたか」なんて、さすがに知っているつもりだったけど、あらためて知り直した。デザインには、進化、あるいは流行り廃りがあれど、その本質は不動というか、戦時に用いられるデザインに通底する“型”のようなものも見えてくる。それに繰り返し惑わされ、戦争を内面化してしまう人間の単純さに恐ろしさを感じたし、定期的に思い出さなければと思う。
書籍を中心としたグラフィックデザイナーとして、ミニ出版社「牛若丸」を主宰するパブリッシャーとして、そしてデザインにまつわる本を数多く発表してきた著述家として──本を舞台に多彩な活動をされている松田行正さんの最新著は『戦争とデザイン』。松田さんはこれまでにも、ヒトラー関連の『RED』、黒人・黄色人・ユダヤ人差別関連の『HATE!』(ともに左右社)や、スターリンや毛沢東をテーマとした『独裁者のデザイン』(河出書房新社)などの著作によって、デザインがどのように戦争や差別、支配に作用したのかを検証してきた。 本書は、近代以前から第1次、第2次世界大戦、そして今回のロシアによるウクライナ侵攻を対象に、戦争と「色」「しるし」「ことば」「デザイン」の4章で構成し、執筆された。ロシア軍が今回多用していたシンボル“Z”についても考察している。 まさに、戦争は“デザイン”されている。「権力がデザインやイメージをいかに巧妙に悪用してきたか」なんて、さすがに知っているつもりだったけど、あらためて知り直した。デザインには、進化、あるいは流行り廃りがあれど、その本質は不動というか、戦時に用いられるデザインに通底する“型”のようなものも見えてくる。それに繰り返し惑わされ、戦争を内面化してしまう人間の単純さに恐ろしさを感じたし、定期的に思い出さなければと思う。