猫の地球儀 焔の章 (電撃文庫)秋山 瑞人メディアワークスこのアイテムの詳細を見る |
今回ご紹介する作品は、以前のレビュー「鉄コミュニケイション」の作者、秋山 瑞人
先生の完全オリジナル小説。先生の才能爆発という出来栄えで、私の超パワープッシュの
一冊となっております。
おおまかな情報を先にお伝えしますね。ジャンルはSF。舞台はおそらく宇宙。そして
見所は、「人類がいない」こと。「猿の惑星」的な解釈でいいと思います。この作品はで
すすね、猿の代わりに、「猫」が主役となっております。
この作品をレビューするにあたって、私はいま凄く困っています。この作品の魅力をど
うお伝えすればいいのか。とても私の力では表現しきれません。でも、この作品を世に広
めるのが私の使命と考え、頑張ってお伝えしますね。この作品は2部構成となっており、
「猫の地球儀 その2 幽の章(作成中)」と合わせて読んでいただくことで物語が完成
します。では「猫の地球儀」の世界へレッツゴー!
※ ここから先は激ネタバレ満載です。ご注意ください。
この作品のベースは、ヨーロッパの魔女狩りや、日本で言うところの踏み絵みたいなの
があると思います。SFなので高性能ロボットももちろん出てきますが、いつの時代でも
「先駆者」に対する扱いは変わらないという無常の表現でしょうか。
タイトルの「猫の地球儀」ですが、これは読み初めですぐにわかります。舞台は宇宙に
ある巨大な母艦みたいな所で、猫とロボットしか存在しません。猫は人間並みの高度な知
能を備え、頭から生えるアンテナのような毛でロボットをコントロールします。そして宇
宙空間に青く輝く大きな星が猫達の間では「地球儀」と呼ばれており、死んだら魂があそ
こに行くと言われていました。
この作品は、生身の身体で地球儀を目指す「スカイウォーカー」と呼ばれる猫の話しな
のです。
ここまでの紹介だと、単に「スカイウォーカー」は「地球儀」に行けたのか、が争点に
なりますが、この作品の見所はそこだけじゃないんですよ。それぞれの猫達の生き様が、
なぜか胸を熱くさせる物凄く不思議なファンタジーなのです。簡単に魅力をご説明します
ね。実は以前にも、この作品はこのブログでご紹介させていただいてますので、見覚えの
ある方もいらっしゃると思います。それも踏まえてのレビューにしました。
見所その1
「譲れぬ生き方」
「スカイウォーカー」が地球儀を目指す上で一番の障害となるもの。それは技術的な面
やメンタリティの問題ではなく、実は同じ猫同士の思想の違いなのです。
猫の世界では、「地球儀」は神聖なものであり、それに関する疑問や研究が一切認めら
れていません。バレると速攻で粛清(処刑)となってしまう世界なのです。要はガリレオ
のような宗教裁判がはびこる所なわけですよ。そこを目指すというお話しなのですから、
文字通り命を賭けた展開になるのは必至なわけで。そうすると気になるのがオチです。ハ
ッピーエンドか否か。私はハッピーエンド主義なので、もちろんハッピーエンドです、と
言いたいところですが、おそらくそう解釈するのは難しいラスト(2巻完結)になると思
います。その理由としては、この作品はそういう枠組みで括れるような単純な内容ではな
いかもしれない、ということです。
何か回りくどいご説明になってしまいますが、私がこの作品を初読したのは今から10
年くらい前。その当時の衝撃は今も色あせることなく、また今になってそのメッセージ性
を理解でき始めた段階です。それくらい、私はこの作品に思い入れがあります。なので単
純に「正義か悪か」の判断がしづらいのです。
ジャンプには「友情 努力 勝利」の三大原則があると聞きますが、この作品はそれと
対照的に「犠牲 失望 達成」の大人の原則が盛り込まれています。世界観を壊したくな
い。綺麗ごとで終わらせたくない。メッセージ性を残したい。そして何よりも、小説が好
きであるという絶対的なポリシー。作者である秋山先生の葛藤がヒシヒシと伝わってくる
表現の数々に、当時の私は深い感銘を受けました。もちろん、今もそれは変わりありませ
んが。読み終わってからがこの物語の本当の意味を探すことになる、考えさせられる作品
です。
見所その2
「群を抜く表現力と描写力」
この作品を形作る上で欠かせないのが、先生の圧倒的な才筆です。物語はかなり独特な
世界観のため、読み始めは戸惑いと、世界観の破綻を気にしてしまいますが、先生の文章
は逆にグイグイと読者を引きつけていきます。
気づけばどっぷりと作品の放つ魅力に浸かってること請け合いです。2巻のラストの小
説なのに視覚効果を利用した表現は、「絶対に小説家になったら使おう」と心に決めたも
のです。私は小説とは何かを教えられました。本当にこの作品出会えてよかったと思いま
す。
Aランク入り文句なし。「猫の地球儀」、オススメです。
「猫の地球儀 その2 幽の章」(作成中)
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