Wikipediaからキブツの空中写真
1965年、全国学校図書館協議会が選んだ読書感想文コンクールのための高校生向け課題図書のうちの一つ。著者は石浜みかる。
私が選んで感想文を書いたのは、沖縄戦を描いた伊藤桂一著「落日の戦場」だった。「シャローム イスラエル」は当時あまりにも知識がなかっただけでなく、淡々とした日記風のノンフィクションに対して手掛かりをつかめなかった。
しかし、作品としては大変優れていた「落日の戦場」は、何度読んでも意識も感情も本に入り込んでいけなかった。したがって、今では何を書いたか全く記憶にないくらいつまらない文章しか書けなかった。恥ずかしい話であるが、沖縄の戦争について曲がりなりにも学んだのは沖縄返還問題に直面したのちであった。
一方、細かな経緯は省略するが、ある時学校帰りの上野広小路の本屋で、岩波新書「イスラーム」を買って読んだ。「そうか、こうした本を読んでいれば問題意識をもって課題図書にも取り組めたな。」と同時に、小説ではない「ルポルタージュ」であった「シャローム イスラエル」の方が、もう少しましな文章を書けたかもしれないと思ったものであった。
どの様な印象を持ったか・・・まず「キブツ」というユダヤ人の共同社会、言ってみれば共産社会・・・が基本的に資本主義体制の国家であるはずのイスラエルに存在したことへの驚き。同時に、本が書かれた当時は「資本主義的入植地」がヨルダン川西岸地区(1964年当時はヨルダン領、1967年の戦争でイスラエルが占領した。)には作られていなかったのかもしれないが、占領以後は現在に至るまで「国際法違反」「国連安保理による違法・非難の決議」にもかかわらず、この地区の面積の60%をわずか19%のユダヤ人が支配し、人口の80%を占めるパレスチナ・アラブ人は残りの土地に追いやられている。
これはまるで「満州国」ではないのか?「入植者」は私の母親も加わっていた「満蒙開拓団」そのものではないか?という印象を受けた。
この一点だけでも、イスラエル国家のユダヤ人たちは、決して全面的に肯定できないな、ということだったが、この中東の問題、欧米社会の長いユダヤ人に対する差別や確執。アメリカとの複雑な関係、イギリスの長年にわたる帝国主義的二枚舌など、そうそう簡単な問題ではないことをこの本をきっかけに学ぶことになった。