憧れの男、高倉健死す

年は父親以上に離れているけど、一番の憧れだった。
それはそんな年でも無いけど、やっぱ任侠物で。
世代的には野生の証明が入口的な作品だった。
でもそこよりも遥か前の作品群。
別にヤクザに憧れたりなんかしたことはないけど、
なんとなく男というものを強く感じたし、
ウルトラマンのようなヒーローが幼少期は好きだったけど
それは架空のもので、映画も架空に演じているだけなんだけど、
それでも人間社会の話だから、現実と被らせるにはうってつけで
高倉健の男の生き様がかっこよくて大好きだった。

任侠物だと網走番外地が代表的だけど、
さすがにデビューからの10年間の作品は知らないけど、
そのあたりの任侠物からレンタルビデオ屋が世に出始めた頃に
唐獅子牡丹や日本侠客伝のシリーズ物などあれこれと見たのだった。
でもゴルゴ13は見てない！ε- （^･･^ ）

中国では日本ではさほど流行らなかった君よ憤怒の河を渉れが
大人気で、男たるものこの杜丘（高倉健）のようにあるべきと
強く印象をもつ老若男女がものすごく多数居たそうで、
娯楽の海外物の解禁の第一発目と言うセンセーショナルな
存在になったことの背景も後押しして、
高倉健が大嫌いな日本人であるのにも関わらず、
手本となるべきバイブルのような存在になったのが凄い。

それもこれも高倉健とはどういう人かと言うと
その一言に集約できる、あの方の姿勢がそう思わせた。
朴訥とか不器用とか無口とか硬派とか男気とか
いろいろあると思うけど、私はあの方はコレだと思う。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」

この言葉を、全身で50年以上オンオフを問わず表現し続けた人。
中国もまだ後進国だと中国の主要も言う現在でも
当時は本当にいろいろ遅れていて、
戦後のなにくそ根性で復興して世界の大国にのし上がった
我々日本人は、ライバルは欧米であり、
アジアは正直見下していた。
周りの大人がそういう態度なのだから、
私ら子どもも人種差別的にもなり、だからこそ対立抗争もあり、
良し悪しもわからぬまま大人にならって小ばかにしていた。
そういう時代の名残がまだまだあったその時代に
高倉健は民族差別もせず、いつもと同じように若手だろうが
一般人だろうが、中国人だろうが、誰に於いても差別無く
腰が低く全く威張らない。むしろ気遣いをして振舞う。
そんなこれ以上ない出来の男を、かっこ悪いと言うやつは
もはや人間じゃねぇ！としかいえない。
それほどの人だから、日本人を大嫌いな中国人も
尊敬して崇拝して止まない人が絶えなかったのだ。

よっぽど政治家になってアジア情勢を平和して欲しかったね。
それはそれでそう簡単には行かないことか…。
でもこんなに過去の戦争などの背景が未だに根強く
恨みつらみばかりをぶつけられて、未来に向かって
一考に歩き出さない近隣諸国ばかりでは、
期待してしまうのも無理は無い。
それももう叶わない事。

ともかく私は営業だしよくしゃべるので、
真逆な男は黙ってサッポロビールなところも
（そのセリフのCMは三船敏郎だが）憧れたし、
男としての大きさや魅力も真似たかったし、
不器用で切れてしまうところは・・・ちょっとなってるけど
（そこだけだと最低だよな）
何度も見て結末も知ってる幸せの黄色いハンカチも
さっきしみじみ全て見て、不器用な男だからこそ
招いてしまった悲劇とその禊のための6年半を
愛が途絶えることなくずっと待っててくれた人が居る
それはああいう人だからなんだと、役と現実がごっちゃになり、
（この後本当に再婚したからね。あの二人は）
自分には自分が大失敗や失態をして失墜した時に
待っててくれる人は居ないと思うと、
誰かのせいではなく、自分の度量の無さがそうさせているのだと
凄く惨めにも思うので、余計にうらやましく泣きそうになった。

やっぱ愛が無い生活は辛いな。
かみさんは居るけど、そんなもんないしね。
エロいことなんて何年もしてない。きっと今後一切無い。
そんな文字通りギスギスした生活で、
病気になってもとりあえず一緒に居るけど
いつでも別れる気満々だし、愛情は欠片もないし、
そんな感じの中高年族も多いことだろうけど、
だからこそあのハンカチが、しかもコレでもかと言うほど
そんなに愛されている男がうらやましくないわけないのだよね。

そんな誰からも愛された男の見本である高倉健がついに亡くなった。
公表から数日たったけど、映画見たら書かずには居られなくなった。
今からでも高倉健のように今一度トライしたいけど、
ぶっ壊れた部分は治らないから難しいなぁ。
でも一生あの方の生き様には憧れてゆく。
それがどうしようもなく腐ったやつに成り下がらない秘訣になるかと。

合掌