心の音

日々感じたこと、思ったことなど、心の中で音を奏でたことや、心に残っている言葉等を書いてみたいと思います。

「武士の一分」に山田洋次監督の「一分」を見たような気がしました。

2006-12-17 10:05:46 | Weblog
 一分、とはいっぷんではなくて、いちぶんと読みますが、最近では使われない言葉ですね。それをあえて使うことにより、「面目とかプライド」とかいうこの言葉を今の日本人に取り戻してほしいという山田監督のメッセージが込められているような映画でした。
 最近、土曜日にある寅さんシリーズを家族4人で見ているのですが、山田監督の作品は、人間の情とか心の機微とかいうものをよくとらえた作品が多いと思いますし、情景描写や音、細かい演出など、本当に映画の楽しさ、面白さを感じさせます。
 この作品もうわさに違わず、本当によく出来ていると思いました。主演の木村拓哉(三村新之丞)、壇れい(かよ)は言うまでもなく、木村拓哉に仕えている徳兵衛(笹野高史)の存在感を感じました。寅さんシリーズでもよくコミカルな端役で出ている人ですが、今回の演技はアカデミー賞助演男優候補だと思いました。
 三村新之丞は海坂藩の下級武士。現在の勤めは毒味役という手応えのないものであり、早くやめて、子供たちにそれぞれの個性にあった剣の道を教えたいという夢を持っていました。しかしその平和な生活は、新之丞が毒味によって失明したことから一転します。
 目が見えなくなった時の、夫の妻への思いやり、妻から夫に対する思いやりなどには、思わずほろりとさせられます。そして自らの出世や欲望しか考えず、他人を思いやることのできない上司の島田。現在の日本のニュースによく出てくるプライドを失った日本人の典型がこのタイプでしょう。三村家の窮状に追い打ちをかけるような島田の行為に新之丞の怒りは頂点に達します。目の見えないという大きなハンディにもかかわらず、剣の修行を積むさまは、本当に鬼気迫るものがありました。
 「武士の一分」をかけて、命がけで戦った果たし合い、そして感動のラストシーンと見所いっぱいの映画ですし、これこそ日本映画の一級品と言える映画だと思います。是非、映画館で見ることをお薦めします。