公務の偉大なアスリート（自己鍛錬者）

８月９日。長崎で多くの罪の無い方々が被爆されました。
先の広島ほど注目されないことが多いですが、長崎の多くの被爆者の方々のご冥福をお祈り致します。

昨日は、天皇陛下が御発言された「お気持ち」を拝聴しまして、とても感銘を受けました。
陛下がいかに真剣に、命懸けで、国民と国家と未来を重んじられているかが滲み出る御言葉でした。

考えて見ますと、２０００年を超える皇室の歴史において、時の天皇陛下が公の場に御顔をお見せになった歴史は、明治天皇が即位されるまで無かったことでした。
決して御顔を直視してはいけない。という慣例のある存在が日本の天皇でした。
御簾（みす：すだれのこと）の奥から、御顔を隠したまま御発声をされました。


陛下が御発言をされることとは、歴史的にも重い行動であるということです。
陛下の御言葉で特に私の印象に残った箇所は、

＊　天皇の務めとして，何よりもまず国民の安寧と幸せを「祈る」ことを大切に考え、国民を思い、国民のために「祈る」という務めに対して２８年間、全身全霊をもって努力されて来たこと。

陛下は、政教分離、国民の信教の自由、を考慮されて「祈り」という表現をされました。
でもこの天皇陛下の祈りとは、宮中祭祀（天照太御神に国民・国家・世界の平和を祈ること）における「祈り」なのです。

伊勢神宮は、天皇陛下の氏神神社（皇室の先祖神を祭る神社）であり、神宮の最高神官でもあるのが、天皇陛下のお立場です。

国民の為に祈るという行為が、ご自身の健康のために途切れることが有っては生けないという使命感がひしひしと陛下の御言葉から伝わりました。
では、陛下の健康と祈りが途切れますと、どうなるのでしょうか？

＊　天皇が健康を損ない，深刻な状態に立ち至った場合，これまでにも見られたように，社会が停滞し，国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。

このように控えめに表現されました。
社会には、そんな影響はない、と考える方もおられるかも知れません。
でも、日々の宮中祭祀において、

＊　国民と国家に災難あれば、私自身の身に引き受けます。

と大神に祈られる陛下の祭祀が停滞した時、過去の歴史には様々な国家存亡の危機に至った史実が何度もありました。

陛下が示された懸念の御言葉の中に、今上天皇の終焉をもって次代の天皇に交代する場合、
＊　大変な過労を伴う葬儀、儀式に約１年間を要すること。
＊　その間に並行して、新しい天皇に成る儀式、準備、事後にやはり１年は掛かること。

この間は、通常の天皇がするべき宮中祭祀も、象徴としての公務も十分に行えないこと。
こういう大変な事態（今上陛下・皇后陛下が体験された）を二度と招かない為にも、ご自身が元気な内に、この２つの行事を分ける策を考えて欲しいという御発言だったと、私は受け取りました。

そこで、御譲位（ごじょうい）。つまり今上陛下が生きておられる内に、次代の天皇に譲位されるご意思だと受け取りました。
国民・国家のために、公務と宮中祭祀が途切れる懸念を陛下はご自身の「責任感」から御発言されたのが今回の意味に思います。

陛下の公務カレンダーを見ましたが、週休１日だけであり、多くの地方への御出張も含めてビッシリでした。
インターネット上ではブラック（過酷な）職業だと驚かれていました。

では、天皇の宮中祭祀が何らかの理由で停滞した場合、過去の歴史で何が起こったのか？を考えて観ます。
日本の国家存亡の危機が、いくつも有るのですが、まず私が思い出すことは奈良時代です。

奈良時代の聖武天皇は、実母が重い心身症で３０年間以上も病に臥せっていました。
これが母親の実家・藤原家が推奨する外来仏教により改善します。
同じく、聖武天皇の奥さんも藤原家の出身であり、外来仏教の熱心な信者でした。

藤原氏（学者によれば地位の有る渡来人だった説が複数あります）は、頭脳明晰であり大陸の言葉に精通していたために、日本の外交を取り仕切る官僚として、１０００年以上も国家の重要な役職を支配した家柄です。
そして藤原氏が熱心に信仰していたのは、外来仏教でした。

実母と奥さんから影響を受けた聖武天皇は、天皇でありながらも外来仏教への帰依を深くされました。
そして決断されたことが、国家予算の大半を注ぎ込み、国民に労務の義務を課した奈良の大仏を建立する大事業でした。

この時代に宮中祭祀が疎かにされた結果、国民と日本がどんな経験をしたのか？
歴史を調べれば分かります・・・・。

天皇陛下の御言葉の後に、総理大臣が声明を発表されましたが、その目には涙があったと私には見えました。
何年間の総理の激務を経験されている御方だからこそ理解できる、陛下の２８年間の重責の継続を見た時、心から鳴動するものが有ったと思います。

名横綱が引退の会見の時に、
「体力の限界・・・・」と声を詰まらせた場面も、なぜか思い出しました。
８０歳を過ぎても休むこと無く走り続ける我慢強い陛下が、御発言をされるとは、よほどのことだと理解しました。
すべてが安定して事が進むことを陰ながら思いました。

以上の内容は個人的な解釈であり、皆さんのそれぞれの思いを大切にしてください。

生かして頂いて　有り難う御座います

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