私は、それから暫くして、妻への思いを妻の両親に伝えるために、妻の実家を訪問しました。
それまでに幾度か妻の実家を訪問していましたので、私のことは理解してもらっていたと思います。
妻の父は、温厚で、いつも笑顔を絶やさず、口数の少ない、少し頑固な感じがする人でした。94歳になって足下が覚束なくなっても、庭いじりと畑仕事が生きがいの老人です。
妻の母は、面倒見が良くて、おしゃべりで、妻の従兄弟や、妻の母が教えた生徒が、妻の母を訪れていました。多くの人に愛されていました。妻の母は今の私たちの年齢を前に肺がんで他界しました。
妻は、若い頃は父親に似ているのかなと思っていましたが、今は、歳を重ねるごとに、妻の母親に似てきているのかなと思います。
さて、
私が席に着くと、妻から今日の私の訪問の目的を知らされていたらしくて、30分近く、両親は入れ替わり席をたって、なかなか話をする機会がありませんでした。
ようやく2人がそろってから、私は姿勢を正し、両親に結婚を前提とした付き合いをさせてほしいということを伝えました。私の心臓はバクバクと音を立て、こめかみあたりの動脈がピシピシと痛んでいました。
妻の父から、
「付き合いについては認めるけど、2人はまだ若いのだから、今、結婚を決める必要はない。これから2人で考えていきなさい」というようなことを言われたと思います。
(そりゃ、そうですよね。どこの馬の骨とも判らない大学生から、こんなことを言われても、いいですよとは言えない。もし私が娘の彼氏から、そんなことを、それも大学生の若造から言われたら、すぐに席を立って、部屋で泣いていたかもしれない)
その後、私は妻の父の話を自分勝手に解釈をして、許しを頂いたと考え、友達たちの応援もあり、駅前の旅館で、大学の友達20数名を呼んで婚約披露パーティを開きました。(もちろん会費制です)
そのときに、司会者役の友達から妻に対して、
「あなたは彼のどこが好きですか」という質問に対し、
妻は「優しいところです」と答えました。(ふむ、ふむ)
「その他には・・・・」
「うまく言い表せませんが、すこし影ががあるところです」と妻は答えました。」(エッ!!!!)
私が、私の生い立ちや家族のことをあまり話さないことを、妻は、私の「影」と、とらえていたのかもしれません。
私は司会者の質問に、
「おおらかで、明るくて、自分と違って常識的な考え方ができるところ」と答えたと思います。(これは今もその通り)
もうひとつ、
「無口で、余計なことを喋らないこと」と答えました。
(当時は、そう思っていましたが、これは全く違っていました。こんな人は観たことがないと思うくらいお喋りです。特に妻と2人暮らしになってからは、パワーアップしています)
続く