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アフガニスタンのいま 長倉洋海が語る
ほっとニュースweb
2021年8月25日(水)午後3時18分 更新
釧路市の写真家、長倉洋海さん。世界中の紛争地を取材し、アフガニスタンでは40年以上、撮影を続けています。
7月まで現地を訪れていた長倉さんに、いまアフガニスタンで何が起きているか、聞きました。 (釧路放送局 田村佑輔)
7月まで現地で取材
写真家としての活動と並行して、長倉さんは2004年からNGO「アフガニスタン山の学校支援の会」を設立し、現地の学校の教育支援を行っています。
つい最近も子どもたちの様子を撮影するため、7月上旬までの約2週間、アフガニスタン北東部のパンジシール州や首都のカブールを訪れていました。その時の様子をこう語ります。
長倉さん
「タリバンが送電線の破壊や、路上爆弾による攻勢を強めていた。そのためカブール滞在中も停電が起きるなど、市民に恐怖感を与えようとしていた印象だ。
8月になって情勢が大きく動きタリバンが首都を制圧したが、ここまで急に進むとは思わなかった」
政権が崩壊してからカブールの国際空港には国外に逃れようと市民が詰めかけ混乱が続いています。
長倉さん
「アフガニスタンは周辺国の介入や思惑で翻弄されてきた。旧タリバン政権の時も多くの人が国外に逃れ、いつか祖国に帰りたい、国の再建に協力したいという夢を持っている人もいた。
今回タリバンが権力を掌握したことで、残った人々もさらに国外に逃れていて、女性弁護士や政治家、ジャーナリストなどの活動をしていた人ほど危害を加えられるのではないかと考えている。
再建に向かっていたアフガニスタンから、国づくりの土台となる人たちがいなくなるのはとても悲しい」
女性の教育 どうなる
長倉さんが支援する学校には120人ほどの生徒が通っていて、卒業生の中には教師になった人や助産師になった人もいるということです。
旧タリバン政権ではイスラム教を極端に厳しく解釈した政策をとり、女の子は学校に通うことができず、女性の先生も教壇に立つことを禁じられていました。
今後タリバンが再び女性の権利を制限しないか、長倉さんは強く懸念しています。
長倉さん
「私たちが支援する学校でもこれからの国づくりのために役立つ人たちが生まれていた。
ことしの7月にインタビューした女の子も、法律家になりたい、医師になりたいという夢を持っていたが、タリバンの政権ができたら、
それらは認められないだろう。夢がどんどん失われていくというのは、女性にとっては大きな悲しみだ。さまざまな制限を加えられるというのはあってはならない」
対話か武力衝突か
いま長倉さんが注目しているのが、タリバンへの抵抗勢力の動きです。北東部のパンジシール州では長倉さんとも親交があるアフマド・マスードさんがタリバンに屈しない考えを示しています。
アフマドさんは、旧タリバン政権と対立し“パンジシールの獅子”とも呼ばれた北部同盟の指導者、マスード司令官の息子です。長倉さんは長年、このマスード司令官の姿を記録してきました。
ことし7月に長倉さんが現地でアフマドさんに会ったときも、勢力を拡大していたタリバンに危機感を持ち、どのように対応するか地元の人との結束を強めていたといいます。
長倉さん
「アフマドはタリバンとの大きな戦いになるという危機感を持っていた。多くの元兵士や司令官、地元の人と何度も会合を開き、意見交換をしていた。
彼らが反タリバンを宣言した背景には、この国に生きている女性や少数の人たちの正当な権利を守るべきだという主張をぶつけたい狙いもあると思う。
ただ、戦闘になれば子どもたちも巻き込まれるかもしれないし、人家や畑の多くが傷つき失われる。地域としてもどうするのか迷っただろうが、それでもタリバンには屈することはできないと決意したのだろう」
これに対して、タリバンの報道官は23日、パンジシール州に部隊を派遣したことを明らかにしています。長倉さんは、武力衝突か、対話か、今後の推移を注視しています。
長倉さん
「反タリバンを宣言した勢力を、力で抑えるのか抑えないか。これからのタリバンの行く末、彼らの本質を見せることになる。
どのような対応を見せるかがタリバンにとっての試金石になるだろう」
日本からも声を
混乱が続くアフガニスタンについて、長倉さんは日本人にも関心を持ち続けてほしいと訴えます。
長倉さん
「アフガニスタンは国家としてなっていないんじゃないか思っている人もいるだろう。
国家としては人材不足で細った部分もあるが、人々はとても親日的で勤勉な人が多いことも知ってほしい。
あり得ないような人権無視の行為は認めないという声を日本からもあげてほしい。
アフガニスタンを世界がしっかりと見続けることが大事。世界のメディアの注目はいずれ薄れていくかもしれないが、私はアフガニスタンのことを見届けたい」
※記事の内容は2021年8月23日時点のものです。
(釧路放送局 田村佑輔)
アフガニスタンのいま 長倉洋海が語る
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2021年8月25日(水)午後3時18分 更新
釧路市の写真家、長倉洋海さん。世界中の紛争地を取材し、アフガニスタンでは40年以上、撮影を続けています。
7月まで現地を訪れていた長倉さんに、いまアフガニスタンで何が起きているか、聞きました。 (釧路放送局 田村佑輔)
7月まで現地で取材
写真家としての活動と並行して、長倉さんは2004年からNGO「アフガニスタン山の学校支援の会」を設立し、現地の学校の教育支援を行っています。
つい最近も子どもたちの様子を撮影するため、7月上旬までの約2週間、アフガニスタン北東部のパンジシール州や首都のカブールを訪れていました。その時の様子をこう語ります。
長倉さん
「タリバンが送電線の破壊や、路上爆弾による攻勢を強めていた。そのためカブール滞在中も停電が起きるなど、市民に恐怖感を与えようとしていた印象だ。
8月になって情勢が大きく動きタリバンが首都を制圧したが、ここまで急に進むとは思わなかった」
政権が崩壊してからカブールの国際空港には国外に逃れようと市民が詰めかけ混乱が続いています。
長倉さん
「アフガニスタンは周辺国の介入や思惑で翻弄されてきた。旧タリバン政権の時も多くの人が国外に逃れ、いつか祖国に帰りたい、国の再建に協力したいという夢を持っている人もいた。
今回タリバンが権力を掌握したことで、残った人々もさらに国外に逃れていて、女性弁護士や政治家、ジャーナリストなどの活動をしていた人ほど危害を加えられるのではないかと考えている。
再建に向かっていたアフガニスタンから、国づくりの土台となる人たちがいなくなるのはとても悲しい」
女性の教育 どうなる
長倉さんが支援する学校には120人ほどの生徒が通っていて、卒業生の中には教師になった人や助産師になった人もいるということです。
旧タリバン政権ではイスラム教を極端に厳しく解釈した政策をとり、女の子は学校に通うことができず、女性の先生も教壇に立つことを禁じられていました。
今後タリバンが再び女性の権利を制限しないか、長倉さんは強く懸念しています。
長倉さん
「私たちが支援する学校でもこれからの国づくりのために役立つ人たちが生まれていた。
ことしの7月にインタビューした女の子も、法律家になりたい、医師になりたいという夢を持っていたが、タリバンの政権ができたら、
それらは認められないだろう。夢がどんどん失われていくというのは、女性にとっては大きな悲しみだ。さまざまな制限を加えられるというのはあってはならない」
対話か武力衝突か
いま長倉さんが注目しているのが、タリバンへの抵抗勢力の動きです。北東部のパンジシール州では長倉さんとも親交があるアフマド・マスードさんがタリバンに屈しない考えを示しています。
アフマドさんは、旧タリバン政権と対立し“パンジシールの獅子”とも呼ばれた北部同盟の指導者、マスード司令官の息子です。長倉さんは長年、このマスード司令官の姿を記録してきました。
ことし7月に長倉さんが現地でアフマドさんに会ったときも、勢力を拡大していたタリバンに危機感を持ち、どのように対応するか地元の人との結束を強めていたといいます。
長倉さん
「アフマドはタリバンとの大きな戦いになるという危機感を持っていた。多くの元兵士や司令官、地元の人と何度も会合を開き、意見交換をしていた。
彼らが反タリバンを宣言した背景には、この国に生きている女性や少数の人たちの正当な権利を守るべきだという主張をぶつけたい狙いもあると思う。
ただ、戦闘になれば子どもたちも巻き込まれるかもしれないし、人家や畑の多くが傷つき失われる。地域としてもどうするのか迷っただろうが、それでもタリバンには屈することはできないと決意したのだろう」
これに対して、タリバンの報道官は23日、パンジシール州に部隊を派遣したことを明らかにしています。長倉さんは、武力衝突か、対話か、今後の推移を注視しています。
長倉さん
「反タリバンを宣言した勢力を、力で抑えるのか抑えないか。これからのタリバンの行く末、彼らの本質を見せることになる。
どのような対応を見せるかがタリバンにとっての試金石になるだろう」
日本からも声を
混乱が続くアフガニスタンについて、長倉さんは日本人にも関心を持ち続けてほしいと訴えます。
長倉さん
「アフガニスタンは国家としてなっていないんじゃないか思っている人もいるだろう。
国家としては人材不足で細った部分もあるが、人々はとても親日的で勤勉な人が多いことも知ってほしい。
あり得ないような人権無視の行為は認めないという声を日本からもあげてほしい。
アフガニスタンを世界がしっかりと見続けることが大事。世界のメディアの注目はいずれ薄れていくかもしれないが、私はアフガニスタンのことを見届けたい」
※記事の内容は2021年8月23日時点のものです。
(釧路放送局 田村佑輔)