時代とともに腕の良い大工が減ってきているといわれていますが、理由として考えられるのは、木造住宅の建築方法が従来の墨付け手加工からプレカット工法へと大きく変わったことです。
今日では木造住宅のほとんどが、プレカット工法で建てられています。
プレカット工法とは、構造材を工場で機械があらかじめ(pre)切断(cut)してから現場に搬入する工法です。現場での大工の仕事は、運ばれてきた資材を組み立てるだけになります。
これまでの木造住宅の主な工法は、墨付け手加工の在来工法と呼ばれるものでした。墨付け手加工の在来工法は、大工が木材を加工して組み立てていく工法です。
この工法では、大工の経験と技能習得に時間も手間もかかってしまいます。
そこで、大工の経験や技能習得のいらない、大量に加工できる、プレカット工法が急速に普及しました。
墨付け手加工の在来工法には、木造住宅を建てる上で縄文時代から受け継がれた必要な技術がたくさん使われています。
木材を加工する段階では、墨壺と・さしがねを使って行う墨付けや、木材を加工していく刻みといった、大工としての基本的な技術が必要となります。
在来工法で家を建てる場合、大工は嫌でもこうした技術を何年もかけて身につけなければなりません。
また、それぞれの木材の性質や、木に対する深い知識も自然に備わります。
一方、プレカット工法では機械で画一的に木材をカットしていくため、木の特徴を活かすということはありません。
つまり、木に対する知識も墨付け手加工の在来工法の技術も、身につける機会がなくなってしまい、プレカット工法には、加工品質を一定に保ち、短期間に大量に加工できるメリットもありまが、大工としての技術を受け継ぐチャンスがなくなり、腕の良い大工が減っている。