
アル中でどうしようもない老いたカントリー歌手の再生。そして、アメリカ南部の空、風、大地、風景。そこにある空気やストーリーが進むと、ごくごく自然にカントリーミュージックが入ってくる。音楽がとても心地いい。きっとカントリーはロックやパンクと同じで、音楽のジャンルにとどまらない生き方のスタイルなのかもしれない。60歳近いカントリーミュージシャンが人生を取り戻して、何かをつかもうとしてゆく話と彼の歌がリンクする。同じ歌でも彼の弟子でネオカントリーな若手が唄うとその意味や雰囲気が変わる。アメリカにカントリーミュージックがある意味が染みる。
この映画で他によかったことのひとつは主人公を演じたジェフ・ブリッジス、若手売れっ子歌手を演じたコリン・ファレルの歌声。いずれも本物カントリー歌手レベル。コリン・ファレルのネオ・カントリーなんてよくできてます。
それと、日本語訳。ちょいちょい入って来るカントリーソングの歌詞にあまり日本語訳が入ってないのです。カントリーは直訳すると「そんな歌詞?」となるし、超訳すると音楽のシンプルさが損なわれる。そもそもタイトルの「クレイジー・ハート」だって、訳しちゃうと陳腐になってしまう。そこをバランスよく、訳してるところと全く字幕のないところと使い分けてあり、そのせいか音楽にすぅっと入っていけました。
ただ、どうしてだろう。近頃、かつてセクシーだったおっさんのぽったり腹を連続で見た気がする。「アイアンマン2」ではミッキー・ローク。今回はジェフ・ブリッジス。ゆるみきった中年腹がどちらもひんぱんに出てきた。きちゃなさがいいのか、ゆるみたるみが人生の後半を意味するのか?
それはさておき、ホロ苦いラスト。これもカントリーには似合っていたように思う。ステキな映画です。