天空海闊

この一篇

  

うちのだりあのさいた日に
酒屋のクロは死にました。

おもてであそぶわたしらを、
いつども、おこるおばさんが、
おろおろないておりました。

その日、学校(がっこ)でそのことを
おもしろそうに、話してて、

ふっとさみしくなりました。

         (金子みすヾ)



この詩で思い出したことがある。

近所の初老の紳士は周囲からその大きな声
で、所謂怖もてである。
気に入らないと相手がだれであろうと叱りつける。

しかし、この紳士が犬を飼い始めたところ
案の定、しつけも非常にきびしい。
少しでも逆らうとリードで殴りつける。
そこまでしなくても良いのに・・・
私は何度も思ったことがあった。

ある日、やぼ用でその家に行ったところ
いつものあの大柄な犬の声がしない。
奥さんに聞くと、数日前に、間違って農薬を舐め
急死したと、涙ながらに言う。
不在のご主人の安否を聞くと、
気落ちしてこの数日食事が喉を通らなくなったのだと・・

私は少し意外な感じを受けた。
それほどまで可愛がっていたとは思えなかったのだ。
しかし、人は外側からは分からないものである。

散歩を殆ど欠かさなかったのもそうだが、
どうやら、特にしつけを厳しくすることで
「良い犬」として皆から可愛がられるとの想いがあり・・
それが飼い犬に対する精一杯の愛情だったのだ。

私は思わず胸が熱くなった。

コメント一覧

又じい
私は犬でもわが子でも「これでもか~!」
と言うぐらい愛情表現をします。
いろんな親子を見ても、この不足から来る
問題の方がより深刻だと感じます。
まぁ、不器用な愛が絵になる人もいますが、
なにせ、私の師はあのムツゴロウ先生ですから・・^^;
オリーブ
その人の本質的なことは、外面とか、普段の態度ではホントにわからないものですよね。一緒に暮らしていても難しい…(^-^;
よく自分の子供を溺愛する人がいますが、人間の場合の溺愛、それは愛することでは憎むことである、とある精神学者が本に書いてましたが、溺愛とは動物に対して使う言葉なのだそうです。そういう意味ではこの方は単に可愛がるという程度を超えていたのかもしれませんね…すみません、こんなことで理屈こねて(笑)
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