ヘッセ考察

段階

どんな花もしおれ　どんな青春も
老年になるように　

どの人生の段階も花開き
知恵もそれぞれ花開く　どの美徳も
決められた時に花開き

永遠に持続することは許されない

心はそれぞれの人生の段階ごとに
別れと新たな開始のために準備をしなければならない
勇敢に悲しみは見せず　新しい絆に身をゆだねるために
そしてどの始まりにもひとつの神秘が内在し
それが私たちを守り　生きてくことを助ける

私たちは朗かにひとつずつ段階を通り抜けるべきである
どの段階にも故郷のように執着してはならない
世界の守護神は私たちをしばりつけ窮屈にする意思はない
それは私たちを生の段階ごとに高め　広げようとする

私たちがひとつの生活領域に慣れ親しみ
くつろぎを覚えるやいなや　衰退の危険がさし迫る
出発と旅の用意がある者のみが
麻痺的な習癖から身をふりほどくことができる

おそらく死の時がわたしたちを若者として
新たな段階に送ってくれるであろう
私たちの生への呼びかけは決して終わらないだろう

……..

この世は、ただもう喧騒と不安から成り立っているようにしか見えないこともしばしばです。けれど草や木はそれでも成長します。

たとえいつの日か地上がすっかりコンクリートの箱でおおわれてしまうことがあっても、雲の戯れは相変わらず存在するでしょう。

そしてあちこちで人間は芸術の助けをかりて　神聖なものに通じる扉をあけておくでしょう。

　　　　「老年の価値：断章十六」より


＊真理に至るためのヘッセの多彩な考察は
様々な洞察を生じさせることに成りました。

しかもそれは単なる言語遊びではなく、
彼自身の現実の人生から紡ぎ出されたものです。

そこには東洋的なものと西洋的なものとの
見事な融合があり、読む度に未だ他の追随を許さない感動があります。

禅寺の若い修行僧