雄一郎の半生
社員寮の管理人として、夫婦で
住込みをしながら朝4時に起きて
朝食を作り、その後は片付けや
清掃。寮内の清掃や食事の材料の
買い出し、それが終わると夕食の
準備や、先方の課長が泊まる部屋の
準備などなど、毎日がめまぐるしく
過ぎていった。
そんな有る師走に寮生達がざわざわと
帰ってきた。「管理人さん、担架は
有りますか?」というので玄関に出てみると
寮生が、酔って戻しながらダウンしている。
おまけに、ズボンがずれ落ちていて
尻毛が見えている。かなりの剛毛で
みんなが笑っていた。仕方なく担架が
無いので、毛布を出してみんなで
寮生の部屋まで運んでいった。
かと思えば、必ずと言って良いほど
連休が来るたびにボイラーが壊れて
風呂に入れない事もあった。業者に
連絡してもなかなか来てもらえない。
雨漏りがして、配電盤の中に漏水し
ブレーカーが落ちて、停電するなど
築40年を過ぎたであろう建物には
トラブルが多かった。
夏は、庭の雑草が生い茂り除草剤を
撒かなくてはならない。しかし、噴霧器は
背に背負って噴霧するタイプで、
全ての庭に撒くのには5から6回は
継ぎ足して噴霧していた。時間も
3時間はかかっていた。真夏の暑い
日差しの中でよく、日射病にはならなかっと
当時を思うと感心する。
この頃はまだ50代で若かった。
住込みで入った頃から、床下に何時も
水道の蛇口から水が出ている様な音が
聞こえていた。前任者にも尋ねたが
知らない様子だった。暫くして、床板が
湿っているのに気づき、業者を呼んで
床板を上げてみたら、床下が水で溢れていた
なんと、水道のパイプが破損していて
そこからずっと漏水していたのだ。道理で
水道代が高かった。後に水道局から電話が
あり、急に水道代が少なくなったことを
尋ねられ、こんな事があったと伝えると
あっけにとられていた。
押し入れもカビが出ていたのもこの状態が
長く続いていたからだとわかった。
今時、部屋がカビるなんてと思った。
次回につづく