自分が大人になり、わかったこと。
私の母は、子供に話してよいこと・話すべきでないことへの線引きが全くできていなかった。
父方の祖母がまだ元気だった頃ーー
母屋の天窓からの陽に当たりながら、祖母とよくおしゃべりした。
自分の息子の容姿によく似た私を
祖母は特別可愛がってくれた。
祖母が私の話が上手だと褒めるものだから、私は調子に乗って饒舌に話した。
ある時、
私は、母から聞いていた話を悪気なく祖母にしてしまった。
「おばあちゃん、
むかし、おばあちゃんのお腹の赤ちゃんが生まれる前に死んじゃったって本当?」
母から聞かされていた話だった。
祖母は昔、妊娠中に祖父の自転車の後ろに乗って転んでしまい流産してしまったとがあるのだと。
母は4、5歳の私にその話をしていた。
私は母から聞いたその話を
何も考えずに祖母にしてしまったのだ。
祖母の顔色は一瞬にして歪み、
その目から大粒の涙がポロポロと溢れだした。
泣いた祖母を見たのは初めてで、私は息をのんで驚き、
自分が大人を泣かせてしまったことに戸惑い混乱した。
前掛けで涙を拭いながら、祖母は事故の詳細を話してくれた。
35年ほど前の出来事を昨日のことのように泣きながら話す祖母は、
自分で自分を責め続けているようだった。
家に戻ると、私は母に泣いた祖母のことを話した。
すると、母は私を怒鳴りつけた。
「なんでそんな話をおばあちゃんにしたの!」
「私が話したって言ったの?
もーっ!余計なこと言いやがって!」
自分のせいで祖母を泣かせてしまったこと、さらに母まで怒らせたこと、
「罪悪感」という言葉をまだ知らなかった私のなかに、
その感情がどす黒く渦巻いていた。
笑顔の祖母を沢山見てきたはずなのに、
笑顔よりもあの日の涙を流した祖母の顔だけが
40年近く経った今も鮮明に思い出される。
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