1980年代後半。
田舎では、自宅で通夜から葬儀まで行うのが当たり前の時代だった。
しばらくすると隣組と呼ばれる近所の人達が集まってきた。
あちこちに鯨幕がかけられ、屋敷には様々な物が運び込まれる。
台所は割烹着を着た女性達でごった返していた。
彼女達は私や弟に憐れんだ眼差しをむけて、
口々にかわいそうにとこぼした。
「まだ下の子は4歳だってよ」
「かわいそうにねぇ」
「あんな小さい子を残してねぇ、〇〇さんも無念だろうねぇ」
「ヨーコちゃんはしっかりしてるねぇ」
色々な人から言われたセリフをまだ覚えている。
「弟君もまだ小さいんだから、ヨーコちゃんがこれからお母さんを支えてあげるんだよ
お姉さんなんだからね?」
大人になり、私が7歳の子供にそんなことを言えるだろうかと時々考える。
庭では私よりも幼い従兄弟達が無邪気にはしゃいで遊んでいる。
一人いじけた様にしゃがみ込んで遊んでいる弟も、父の死を正確には理解していない様だった。
母は、葬儀の途中お坊さんがお経を読んでいる時に気を失って倒れてしまった。
母の兄が母の名前を叫びながら、母を抱き起こした。
(私がしっかりしなきゃいけないんだ。)
当時の私は、自分を奮い立たせるしかなかった。
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