幼稚園の頃、大好きな人がいた。
私より背が高い。
私より力が強くて、腕も太い。
私より色々なことを知っている。
何かに集中すると鼻息が荒くなる。
手の込んだ、ファンタジックな嘘をつく。
誰に対しても優しくて、正義感が強い。
くしゃっと笑う笑顔がかわいい。
そんなミユキちゃんが大好きだった。
幼馴染のミユキちゃんと一緒にいると、時間を忘れるほど楽しかった。
二人の世界を分つ、夕方5時の鐘が恨めしかった。
幼稚園の年長になり、
彼女と、もう一人の友達ヒロコちゃんが、
なにやらコソコソと話す事が多くなっていた。
私には教えたくない二人の秘密があるようだった。
後からわかったのは、
二人は幼稚園のある男の子にラブレターを書いていたのだ。
…衝撃だった。
その頃の私は、男の子にいじめられていたこともあり、
異性を好きになるという感覚が全く理解できなかった。
ミユキちゃんがヒロコちゃんと仲良くしてるだけでも、嫉妬心で勝手に傷ついていたのに、
男の子が好きだなんて。
ショックで目の前が真っ白になった。
楽しそうにラブレターにセロテープで匂い玉を貼り付けている、
ミユキちゃんとヒロコちゃんがとても大人に見えた。
その横で、手持ち無沙汰な私は匂い玉の香りを嗅いでいた。
なんともいえない臭いがして、胸がキリキリと痛んだ。
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