さくら一家とおいちゃん夫婦が、三泊四日の九州旅行に旅立つ前という始まり方。
商売やってると、長期旅行なんて夢の夢。満男も幼稚園に慣れ、店もぼちぼち安定を続けていたからこその計画でしょうか。
作品の中とはいえ、家族旅行のワクワク感が伝わり楽しくさせられます。
ところが、とらやの平和を破るのが寅さん。タイミング悪く【良く?】帰って来て、皆で仲良く旅行へ出かける予定と知り臍を曲げます。
旅先からの電話も執拗に待ち、暇を持て余し、タコ社長やげんちゃんと酒を飲みグダグダになる。他にやる事ないの?って呆れますが、まあ寅さんだからご愛嬌。
でも旅の日程を少し早めて帰ってきた家族に、寅さん流のおもてなしで待つ姿は微笑ましい。タコ社長やげんちゃんの力を借りてご飯を炊き、鮭を焼いたり、白菜の漬物をどっさり切って準備。寅さんは、お風呂を沸かし、「ただいま」と声をかけるさくらの顔を見れずに湯をかき混ぜる。
かわいいなあって声が出ちゃいました。
本作のマドンナは、岸惠子。寅さんの同級生の妹役で、あまり売れない絵を描いています。岸惠子ってパリジェンヌだったんですよね。キャンバスに向かう姿がよく似合う。
作家らしく、自由奔放で気も強く、出会ったばかりの日に寅さんと大喧嘩するエピソードもあったり、今回のマドンナは鼻っぱしらの強い女性ですが、この頃くらいから女性の像も強くなっていたのでしょうね。