母は認知症。先月、姪と息子とで面会に行った時、誰のことも覚えておらず。リモート画面をチラ見しても心ここにあらず。声もどこから聞こえるかわからないようだった。
入所してまる6年。ここ2年の間にだんだん
と弱り、歩行ができなくなるとともに認知もどんどん落ちて行った。
私は母とは気が合わなかった。でも、思い起こせば色々心配をかけ、それなりに面倒もみてもらった。息子はおばあちゃんが大好きだと言う。それは母の愛情のしるしだからありがたい。
もう目も閉じたままで反応もなかったけど、今までありがとうねと話しかけると薄目を開けた。耳は聞こえているんだね。
底冷えのする夕暮れ。病院へ入る道すがら、大きな雲がいくつも群をなし流れて行くのを見上げた。
その雲が父、兄、姉、愛犬ぎんじに見えた。母を待っているのだろうか。
母は苦しむ様子もなくうとうとしていた。
戦争をはじめ、暴君の父に連れ添い苦労の大きかった人生。でも母には味方が多かった。今思えば、そこそこ幸せだったのではないかと思える。