マドンナは太地喜和子。妖艶な和服姿の芸者ぼたん役がよく似合います。
苦労人ぼたんは知人からの投資話に乗ってしまい、200万という大金を失います。正義の男寅さんは激昂し、たこ社長を使って取り立てに向かわせますが、相手は法律スレスレに詐欺るしたたかな男で太刀打ちできません。
寅さんは以前居酒屋で知り合った画家のじいさんに頭を下げ、絵を描いてほしいと頼み資金繰りを計画しますが、芸術を借金の手段として使えないと断られます。
ぼたんは寅さんの優しさに打たれ、気持ちだけで十分だと涙しますが、結果的にぼたんの元へと立派な絵が届けられた。それを売れば貸したお金を回収できますが、ぼたんは絶対売らない。一生大事にすると決心。
画家役は宇野重吉、寺尾聰の父で名高い名優なのですね。本作の中でも親子出演をしています。
若い頃の恋人だった女性役岡田嘉子さんの元を訪ね昔話を交わし、旅立ちの時には車で街並みを去る彼をそっと玄関先で見送るシーンが素敵でした。無名だった彼を支え、有名にしてから別れたのでしょうか。
老いてからの再会はとても静かで、庭に咲くあやめのような清らかさがありました。
「ぼくはあなたの人生に責任がある」と語りかける彼に対し彼女が言う「人生に後悔はつきもの。人は人生において二つの後悔をする。一つはやらなかった事への後悔。二つ目はやってしまった事への後悔」というセリフにぐっときました。
本作で満男君は小学一年生。大きくなりましたね。社長がカップ天そばを食べるシーンもあり、日本人の文化にカップヌードルだけでなく、そばやうどん、焼きそばのカップ麺も浸透していた時期なのでしょう。
やっぱ昭和の思い出って、ワクワクします。