江戸川教育文化センター

「教育」を中心に社会・政治・文化等の問題を研究実践するとともに、センター内外の人々と広く自由に交流するひろば

保護司の施設視察研修

2024-12-10 | 随想
10月某日保護司の施設視察研修に参加した。
場所は茨城県の「茨城農芸学院」バスで出発した。
茨城農芸学院の研修は午後からなので、牛久シャトーで休憩・昼食になる。

《牛久シャトー 休憩・昼食》
牛久シャトーは1903年(明治36)に実業家神谷傳兵衛が建設した日本初のワイン醸造場の建物を今に残す施設。
2007年に近代文化遺産、2008年に国の重要文化財に指定。
2020年に日本遺産に認定された。
施設内は広大で当日は雨のため、売店でワインやブドウなどお土産品を見たり買ったりしたあとに牛久シャトーレストランでの昼食。

 煉瓦造りのワイン貯蔵庫を改装した高級なレストラン。
特別な空間でコース料理のカジュアルフレンチを満喫、また行きたくなる美味しさだった。





《「少年犯罪の現状と課題」で院長の話を聞く》
戦後間もない1949年(昭和24)に発足した茨城農芸学院。
心身に著しい障害がない12才以上23才未満の者が対象者だが、現在は義務教育を修了した15才以上20才未満の者が収容されている。
A院長より「少年犯罪の現状と課題」について講演を受けた。

少年犯罪は激減していると云う。
今少年院は収容員数が少なく、全国にある少年院の数も減っている。
1989年(令和元年)の刑法犯検挙数を100とすると2021年(令和3年)は17.7の割合である。
また、深夜徘徊で補導される数も大幅に減っており、いじめに起因する検挙・補導数も40%近く減っている。
その反面、家庭内暴力認知件数が増えているのが特徴で、平成元年の893件が30年後の令和3年には4140件にもなっている。
 こうした背景には社会情勢の変化があると云う。
「少年の特性」として⑴集団行動の減少 ⑵所属意識の希薄化 ⑶飲酒・喫煙・乗り物への興味や関心の低下がある。

①暴走族は減っておりグループ化は「今どきダサい」と云う感覚で、単独行動が増えている。
今世間を震撼させている闇バイト。スマホで募集に応じて、受け子・出し子の指示もスマホ。
本人確認はもとより家族の情報も掌握され、逃れられない様に脅されバイトに応じる。
店の金品を奪う、住居に侵入する、ハンマーで殴るなどの実行犯は、お互いを知らないで凶悪な犯行に及んでいる。

②こうした犯罪行為は集団への所属意識の低下や希薄化にあると云う。
集団の中に入っていることは大事で、家庭や職場、友人、サークルなどに所属していると「存在意義」や「誇り」など生じてくる。 
それが悪い事をする歯止めになり、「所属意識」の大切さを語ってくれた。

③飲酒・喫煙は減っている。これらは年齢確認もあり簡単には買えない。親も喫煙はしない世代である。
これは良い事と云える半面、大麻へと飛びつく。買いやすく1本5千円で一週間は持つと云う。
ネットから情報を得て公園で買えるし年齢確認もない。

④今どきの子ども、少年はゲームセンターに寄り付かない。
行くのはお金のある年寄で暇な時間を過ごして、互いの交流の場となっている。
若者世代はテレビを見ない。動画・ユーチューブを見ている。スマホがあらゆる面で市民生活を劇的に変えてきた。
院長の説明は丁寧で分かりやすかった。


《施設内を見学した。》
東京ドーム5個分の広さをもつ敷地には、グラウンド・体育館やプール、教育棟や実科教室、農場等がある。
定員は150名だが現在88名がここで11カ月間矯正教育を受ける。
生活指導・職業指導・教科指導・体育指導・特別活動指導と多岐にわたる。
職業指導はパソコン実習や溶接、園芸関係や造園、フォークリフト・クレーン運転等建設車両の技能実習などもある。
また農場ではブドウ栽培もしており、年間1200㎏牛久シャトーに納入し、畑ではピーマン・なす等の野菜も育て食している。

教科指導は高校卒業程度認定試験や特別活動指導では老人ホームの介護体験・地域の清掃活動など社会貢献活動を実施している。
退院後の社会復帰に向けた充実したプログラムを多く用意してあり、進学や就職への不安解消と将来へ希望を見通すことが可能になる。
少年達を直接指導する職員50名は日々奮闘している。


《おわりに》
少年犯罪は増えていると思っていたが減少とは驚いた。
減っているけれども「闇バイト」で凶悪な犯罪は身近なところで頻繁に起きている。
スマホの指示命令で殺人も厭わなく実行した少年たちの行く末はどうなっていくのだろうか。

スマホが無かったら生きていけないくらい、多くの人の生活に入り込んでいる。
モバイルゲーム・ソーシャルゲームに嵌り、終わりのない課金を繰り返す者も多くいる。
それ故ゲームの課金で多額の借金を抱え返済に窮して、闇バイト実行役に安易に引きずり込まれてしまう若者も多くいる。

高齢者をだましてお金を振り込ませる特殊詐欺は依然終わらない。
人や店舗を直接襲って金品を奪っていく殺人強奪事件は多発している。

これらを実行している「闇の実体」の検挙は、保護司の任務ではない。
事件に関わった者たちが保護観察に処され、再犯防止と云う目的と使命感で更生に関わるのが保護司の任務だが課題は大きく重いと感じた。




<デラシネ>
2024/12/08

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