江戸川教育文化センター

「教育」を中心に社会・政治・文化等の問題を研究実践するとともに、センター内外の人々と広く自由に交流するひろば

若い教員を育てられない教育委員会と学校現場(13)

2020-01-27 | 随想
ある女性の学年担任が産休に入った。
代わりに着任したのは20代の女性である。

民間会社でも働いた経験があるという彼女を産休代替として確保できただけでも喜ぶべきことであった。
何しろ近隣の学校では代替が見つからず、副校長が担任をしているという。

さて、どんな仕事ぶりが見られるか興味津々だった。
もちろん職員には紹介され挨拶もされたことだろうが、私との出会いはちょっと衝撃的だった。

朝、出勤すると机上に学習プリントの印刷依頼があった。
(定形の業務依頼書があり、何をどのようにいつ迄に行いどこへ置くか等をメモする。)
朝一の仕事として印刷を終え、「元教員の◯◯です。産代のお仕事頑張ってください。応援します」というメモを添えて彼女の机上に置いた。

休み時間に私の座っている背後を通って自席に着いたようだ。
私もその日は仕事が立て込んでおり、敢えて彼女に挨拶には行かずに仕事を続けた。


翌日、出勤するとまた彼女からの依頼物が大量にあった。
英語学習で使うようで、児童個々の氏名を大文字と小文字の2パターンで所定の用紙に見本として書き込む作業だ。

依頼書には「正確に書いてください」とあった。
現役を離れて以来、そんな細かい仕事はしたこともなく、まして手本となるような丁寧なアルファベットは書いたこともない。
私としては最大限の神経を使ってやっとのことで30人程の名前見本を書き上げた。

「名前・苗字の順に書き、ヘボン式ローマ字は用いませんでしたが、確認してください」というメモを書き添えて彼女の机上に置いた。
休み時間に職員室へやって来たので、私の方から彼女の机に出向いて挨拶がてらメモの意味を詳しく話しに行った。

けっこうリラックスした感じで話しかけたつもりだったが、彼女に笑顔はなくただ「ハイ」と言ってうなずくだけだった。
私にしてみれば、苦労して書いたものなのでもう少し変わった反応がほしかったし、それなりに彼女から何かを引き出そうと考えて話しかけたのだが不発に終わった。


翌日、廊下で初めて会った際には私から挨拶の声をかけたが、彼女からは特に言葉はなかった。
そればかりか、自席に戻るとまたまた彼女からの依頼書が置いてあった。
「正解例通りに採点してください」と書かれたワークテストの採点依頼だ。
だったら、さっき会った際にはその話もしたら良いのに・・・と思った。


こんな状態はその後も続いた。
初めのうちは、緊張していて言葉も容易に出ないのだろうと思っていたが、先日、私が印刷室で仕事をしている時に彼女が入って来た。
顔を合わせようともしないので、「おはようございます」とこちらから言葉掛けしたら、ようやく返事が返ってくる状態だった。

「挨拶」指導を口うるさく指導する学校にあって、こんな感じで彼女は大丈夫なのだろうか・・・心配になってきた。

ところが、この彼女、子どもたちの前では毅然としたというか怖いほどの口調で指示をしているのを見てしまった。
就学時検診のお手伝いの予行練習をしている際、廊下を歩きながら何人かが話しているのを見て、「話をしない!まっすぐ並ぶ!」と大きな声で注意していたのだ。
その表情は冷たく近寄り難い雰囲気があった。

そう言えば思い当たる節がある。
彼女の前任の産休に入った教員も、かなり個性的な人ではあった。
私への業務依頼もぶっきらぼうな感じであった。

他の教員たちは「いつもありがとうございます」とメモ書きしてあったり、作業後に会った際には「ありがとうございました」と声をかけてくれる。
ところが、彼女は機会的に仕事を私に依頼するだけで特段の言葉がけはなかった。
実に割り切っている人であった。
私も教員の雑務が仕事とわきまえているので、敢えてお礼の言葉がほしいわけではないが、いかにも当然という感じで私に振ってくる教員に対してはあまり良い印象は持てなかった。

まさか、産代の彼女は、前任の担任に依頼作法を伝授されての立ち居振る舞いとは思いたくないが、このままでは今後が心配である。


<すばる>

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