江戸川教育文化センター

「教育」を中心に社会・政治・文化等の問題を研究実践するとともに、センター内外の人々と広く自由に交流するひろば

わが故郷(3)ー減反に向き合うー

2024-10-19 | 随想
24戸で形成されていた集落はどの家も水田や畑を持っていたが、完全な専業農家は数軒に過ぎず、我が家のように兼業をする家が多かった。
それは耕地面積が少なく、米作だけで生計が立つ家はごくわずかであったからだ。


私が地域社会の様子をある程度は理解できるようになった頃は、既に高度経済成長の終盤にさしかかっていた。

初めて「出稼ぎ」という言葉を知り、稲作中心の東北地方の農民が農閑期に都会へ出て働き高度経済成長を底辺から支えていた頃である。
農業だけでは食っていけない農業政策をとりつつ、二次産業興隆のための労働力として使うとはあまりにも農民を愚弄する話ではないか!

私の集落からも農閑期には都市部の建設現場に働きに出る人々が少なからずいた。
祖父も一時期はその一員として加わっていた。
そうは言っても、東北の出稼ぎとはまるで異なり自宅から通勤する季節労働者であった。

こんな時期、近所の家々からも父同様に外へ勤める人々が次第に増えてきた。
社会科の授業で習った兼業農家が第一種から第二種へ変わっていく様子を垣間見ているようであった。


そして、まもなく始まったのは米の減反政策である。
これは形の上では2018年度に廃止されたが、実質的に今日も続いている。

私が学生時代に八郎潟の干拓事業(大潟村が発足していた)をフィールドした際には、未来の農地を求めて全国から選りすぐられた入植者がやって来ていたが、同時に減反政策が開始されていたのである。
八郎潟の大規模干拓をめぐっては、そこで生活していた漁業者をも廃業に追い込む等、国策としての「大規模モデル農村」事業は発足時から今日に至るまで人々を翻弄し続けているように思う。


異常気象も一つの原因とする最近のコメ不足も、基本的には実質減反政策を維持しつつJA農協の利害を優先して進める政府の無策が原因であり、消費者にも生産者にも厳しい負担を強いている。
例えば、フランスの様に主食(フランスではパン)は安価で提供できるように流通システムを変える必要があるのではないか。
(フランスではパンの材料である小麦生産農家に生産量に応じた補助金を出している。)

それには、生産者米価を上げるのではなく、フランスのように農家には一定の収入補償(生産コストに見合う補助金)を税金で賄えばよいのではないだろうか。
そうすることにより、消費者は安く米が買え、生産農家も持続可能な経営が可能になると考える。

さらに突っ込んで考えるならば、経営規模の大小を問わずに稲作を奨励して減反を行わず生産量を高めることが重要だと思う。
国民の主食をしっかり確保して残りは輸出に回すのである。
地域によっては収穫時期をずらして二毛作を検討することも可能である。
食料自給率が極めて低い現状を変えていくためにも、稲作を中心に生産と消費の在り方を根本的に変えていく必要がある。

(つづく)




<夢現代>


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