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田舎ぐらし(84)

ー じゃがいも ー


 
 菜園のじゃがいもを掘った。
10メートルに満たない畝がふたつ。足でスコップを押し込み、起こすと大きいの、小さいの、ボロボロ出てきた。軽く土を落として四つのかごに入れ、耕耘機の倉庫に仕舞った。

 自作の倉庫が幸いして風通しがよいから、腐ることはないだろう。ささやかながら食料備蓄のつもりである。もちろん、これだけでは2か月もてばいい方。でも秋にはサツマイモ、冬にはサトイモが採れる。このイモ達を主食とし、折々に近くで育つトマトやかぼちゃやその他大勢を副食にすれば、まず飢えることはなかろうと高をくくっている。

 このご時世、何があるかわからない。
食糧自給率37%(令2年。農水省)。食料の大半を輸入に頼っている現況で、もしどこぞの国と戦争になれば、スーパーの棚から食料が消えるのにそんなに時間はかからない。

 アブラハム・マズローの欲求5段階説を持ち出すまでもなく、“ 食うこと ” は生きるための最優先事項である。うちは〇百万円の高給取りだからと自慢したところで、買う食料がなければ話にならない。


「戦争中の暮しの記録」暮らしの手帳 所収 写真は読売新聞提供とある。

 日本も終戦直後は食料不足で歩道の敷石まではがしてジャガイモを作ったというのに(田舎ぐらし(24))、それを知るのは今では80歳を超えた人ばかり。平和ボケもここに極まれり。

 それじゃ、どうしたらいい?と問われれば、田舎で畑をやるのが一番だと答える。


(次は ー 畑がなくなるー )

 

 


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