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田舎ぐらし(110)

ー 働かざる者が食う国 ー
 
 

 先日、家内の用事で年金事務所を訪ねた。
待合に入ると壁際の机に、「職歴を全部紙に出してあげます」といった内容の案内が置いてあった。以前から自分のが欲しいと思っていたので、受付に頼むとほんの2~3分で一覧表を出してくれた。保険料の納付月数に続けて「厚年昭和〇年〇月〇日~昭和〇年〇月〇日 株式会社〇〇」などと書いてある。

 途中、会社名がなく「国民年金」とだけ書いてある行があった。
仕事をしていなかったわけではない。渋谷にある会社で一日8時間、週5日ちゃんと勤めていた。ただ厚生年金に入ってなかった。

 全員が営業で、やることといえば一日中アポ取り。受話器を置いていようものなら奥から部長の怒号が飛んできた。売り上げをあげられない月は給料ゼロである。

 妙なことにこの会社が一番印象に残っている。
仕事をしないと1円の金ももらえない。保険料を払ってないから厚生年金ももらえない。実にシンプルだ。その昔縄文人はイノシシを捕まえに山に入った。狩りが下手でイノシシをかついで帰ることができなかったら、家族は飢えた。

 時代を経て人間は年金という仕組みを考え出した。働ける間に保険料を払っておけば歳をとって働けなくなっても金がもらえる。妙案だ。
 ー もっとも、「もらう」という言い方はお上に媚びているようで気に入らない。保険料も払っている訳だから当然受け取る権利がある。ー

 ところが、専業主婦(夫)は保険料を払わなくても年金が出るという(国民年金法7条1項3号)。ちょっと目を離している隙に台所でチンすることまで労働になってしまった。これではキャリアウーマンが怒る。

 働かざる者、食うべからず。古くからの言い伝えに従わず、あちらにもこちらにも金をばらまいているとその中どえらいしっぺ返しを食うことになる。
 

 

 


 



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