「自分は何ができるのか」
世界で子供たちの身に何が起きているのかを綴った、7本のショートムービーからオムニバス。
この映画のメッセージ性にいろいろ考えるところがあって観に行きましたよ。
以下は各作品ごとの感想文。
順番は公式サイトの並びに準じてます。
『ビルーとジョアン』-ブラジル
この映画で一番のお気に入り。
幼い兄妹がリアカーを引いて、くず鉄拾いをして小銭を稼ぐ一日を追ったもの。
客観的な事実としては、くず鉄拾いをしながら日銭を稼ぐなんて、悲惨なことこの上ない。
でも、幼い兄妹の天真爛漫な笑顔は、なんとなく救われるような思いに。
とはいえ、ラスト、ファベーラ(貧民街)を押し潰すようにそびえる高層ビル群と、それを背景にリアカーを引いている兄妹の画が、なんとも言えずに悲しい気分にさせられた。
監督:カティア・ルンド
出演:フランシスコ・アナウェイク・デ・フレルタス、ベラ・フェルナンデス、他
『ジョナサン』-イギリス
他の作品が現実の生活にカメラの目線を置いているのに対し、この作品だけは主人公が若返って、幻想的な世界に迷い込むというもの。
他作品とのブレがありすぎてわかりにくかった。
戦場で強く生き延びる子供たちだけの生活がある、という事実は重たかった。
監督:ジョーダン・スコット、リドリー・スコット
出演:デヴィッド・シューリス、ケリー・マクドナルド、ジョーダン・クラーク、ジャック・トンプソン、ジョシュア・ライト、他
『アメリカのイエスの子ら』-アメリカ
この中では2番目に好きな作品。起承転結がしっかりしていて、物語としても観れる。
飲んだくれでシャブ中の父親と、同じくシャブ中の母親。そんな両親から、エイズベビーとして生まれた女の子の家族の話。
悪者探しをすれば間違いなくこの両親であり、子供は一方的な被害者。
でも、その子供を唯一愛してくれるのも、この両親だけ。
未だ差別が根強いこの世界にあって、主人公のブランカはどうなってしまうんだろう、という不安にすごくかき立てられた。
ラストは家族で病院のカウンセリングを受けに行くところで終わるのだが。
仮にカウンセリングが成功したとしても、病気が消えてなくなるわけでもない。
精神的に救われたとしても、決して時間が戻るわけでもない。
親子愛に感動するのと同時に、HIVを取り巻く病理的・社会的問題に考えさせられる一作だった。
監督:スパイク・リー
出演:ロージー・ペレス、ハンナ・ホドソン、アンドレ・ロヨ、他
『ブルー・ジプシー』-セルビア・モンテネグロ
少年院に収監されている少年が主人公。
主人公が塀の中で暮らしている最中に、塀の向こうにいる父親とその家族は窃盗団を組織して暮らしている。
そして、少年院を出た少年は親の命によって盗みを働くがが――最終的には、自ら塀の中に戻ってしまう。
ロクでもない親の元にいるぐらいなら、塀の中の方がまだマシという皮肉な話なのかなと思ってたら。
公式サイトの監督の談話によると、
>彼らにとっての自由は、僕たちが考えている自由と反対の意味を持つということを知ったよ。彼らは金を使い果たしたときや冬の寒い季節には、軽犯罪を犯すことで刑務所に戻ろうとするからだ
とのこと。
皮肉な結果を自ら選択している子供たちがいる、というお話だったのだ。なんとも切ない話だ。
監督:エミール・クストリッツァ
出演:ウロス・ミロヴァノヴィッチ、他
『タンザ』-ルワンダ
ルワンダの少年兵の話。
物語らしい物語はないけれど、子供たちが銃を手にして殺し合いをしているという世界は、なんとも胸が痛い。
この映画を見て、子供たちの置かれた環境に色々な思いがあるけれど、戦場で戦わざるを得ない、このタンザの環境が一番胸が痛かった。
だって、戦争なんて子供たちの意志で起きるはずもなく、大人たちの都合で起きているのだから。
しかも、このルワンダの場合、無責任な大人たちが後始末をしなかったものだから、巻き込まれる形で子供たちが銃を手にするハメになっている。
学校の教室でタンザが涙するシーンでは、彼がまだ人間らしさ――子供らしさを失っていなかったということでホッとさせられるが。
彼の環境は、おそらく変わらないだろうという現実がとても悲しい。
監督:メディ・カレフ
出演:ビラ・アダマ、ハノウラ・カボレ、他
『チロ』-イタリア
イタリアの少年窃盗団ってことで、ちょっとジョジョっぽくて格好良かったりする。ラテン系だしな。
でも、悪ぶってるけれど、根はやっぱり子供で遊園地に心をときめかせる彼ら。
子供らしさが、生きるための悪の行為で塗り込められている、という現実がやりきれないな。
子供は子供らしくしていてほしい、なんて思わせる作品だった。
監督:ステファノ・ヴィネルッソ
出演:ダニエリ・ヴィコリト、エマヌエーレ・ヴィコリト、マリア・グラッツィア・クチノッタ、他
『桑桑(ソンソン)と小猫(シャオマオ)』
裕福だけど親がいがみ合っている桑桑と、ビンボーだけどお爺ちゃんの愛に包まれている小猫。
なんか、世界名作劇場の世界のようなお話だったけど。このお話も、ちゃんと起承転結があってストーリーが面白かった。
そして、何よりもラストが2人の子供たちの笑顔で終わったのがいい。
ぶっちゃけ、出来すぎというか、ベタすぎな印象は強いんだけど。だけど、最後の最後はきちんと救われていてほしい、ってのがある。
上記6作品は、いずれも現実を切り取って見せて、その変えようのない現実に胸がふさがってしまうんだけど。
最後の、この作品ぐらいはちゃんとハッピーになって終わって良かったと思う。
監督:ジョン・ウー
出演:ザオ・ツークン、チー・ルーイー、ジャン・ウェンリー、ワン・ビン、ヨウ・ヨン、他
この映画は、世界中の子供たちの現状を、映像を使って伝えようという強烈なメッセージ性をストレートに放ってます。
お涙ちょうだい的なベタな作りではなく、極力、抑揚を押さえて現実を直視させるような作り方です。
なので、わりと制作者達のメッセージは伝わりやすいのでは、と思います。
そういう作品を見て、何を考えるかは見た人の考え方次第だと思います。
しかも、我々は映画の舞台にはなっていない、日本に住んでいるんだし。
んで、オレなりに考えたことなんだけど。
いろいろ世の中にはあるんだろうけど、何はなくても自分の子供たちだけは守りたいな、と。子供はまだいないけど。
戦争はやっちゃいけないし、クスリもいかん、と。
それは自分の身を危険にしたくないってのもあるけど。
それと同時に、自分の子供にまで負の遺産を残したくない、子供たちが選択の余地無く戦争に巻き込まれたり、病気を患っているという状態にはしたくない、っていうカンジです。
将来、子供たちが自分の意志で犯罪者になることを選ぶなら、それはそれで仕方がないかもしれないけど。
親のエゴで、犯罪者にはしたくないと、そう思いました。
『それでも生きる子供たち』(映画館)
http://kodomo.gyao.jp/
評価:8点
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