夕張市役所がある本町地区。かつて「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」のメイン会場もあったこの地域には、ゆうばりキネマ街道があります。
この地区に足を踏み入れると、20世紀名画の絵看板が至る所に掲げられていて「映画の町・夕張に来たんだ!」という強いインパクトがあります。
Webサイト「夕張360°」によると【当初93枚もの絵看板】があったそうです(その後、Webサイト掲載時には28枚が残っているようです)
しかし、これらの看板は、映画が国内で上映された当時に作られたものではありません。夕張市内で上映されたときの看板でもありません。
中田市長による絵看板の記事
ゆうばりキネマ街道に設置された映画の絵看板について、当時の中田市長が言及している記事が『うおんつ』2001年2月号に掲載されていました。
当該号は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 2001の特集号でした。その中で、絵看板についての記事もありました。
それによると、『週刊朝日』2000年3月24日号に掲載された「青梅市が映画看板で町おこしをしている」という銀幕街道の記事を中田市長が読んだことがきっかけだったそうです。
(『週刊朝日』の記事は見つけられなかったので、銀幕街道の様子を記したLIFULL HOME'Sのブログ記事も参照してください)
この記事を読んだ、中田市長が夕張でも同じことをやろうと即決。
看板に使う映画の著作権は【これまで続けてきた映画祭で夕張は映画の街として映画界に理解され、著作権問題はクリア】されたそうです。
――映画祭の自治体だから特例的に認められた、みたいな意味でしょうか? ちょっと、よくわからないのですが……特に外国の映画の扱いとか――
看板にする映画は中田市長が選び、札幌市の「みうら工芸」にお願いして作成が始まったとのことです。
ちなみに本記事では、看板にしたのは【60作品】とあります。
先の「夕張360°」の【93枚もの絵看板】と食い違っていますが……60作品を使って、93枚の看板を作ったという意味でしょうか?
また、中田市長が選抜した60作品の内訳は不明です。
余談ながら……
なお『うおんつ』に掲載された記事は、夕張市の公式なアナウンスではありません(とても重要)。
製作の経緯、著作権のこと、描かれた作品の内訳、製作された看板の枚数などなど。夕張市に残されているであろう資料を見てみないことにはハッキリしないです。
また、中田市長が『女ひとり大地を行く』について、以下のように言及しているのですが。
【1946年のまだ終戦直後のこと。山田五十鈴さんらが炭鉱夫の物語を綴った映画のロケで夕張に来てね。僕もハシゴをかついで手伝った記憶がある。】
山田五十鈴が1946年に夕張でロケをした、というのは1952年の誤りです。しかし、1952年といえば、すでに中田市長は夕張市の職員だったので、【手伝った】というのは事実かも知れません。
また、山田洋次についても言及があるのですが。
【山田洋次監督も助監督だった53年に、夕張でロケをやっているんです】
この【53年】というのが1953年なら、山田洋次はまだ学生。助監督をやっていたというのは疑問です。
また、昭和53年なら、すでに『幸福の黄色いハンカチ』の監督をした後です。この発言の意味がよくわかりません。
といった具合なので、絵看板に関する発言についても夕張市の資料を当たるべきでしょう。
このブログの記事も「雑誌でこういう発言があった(ソースは中田市長の発言のみ)」ぐらいのものと思ってください。
ぐるっとゆうばりキネマ街道
かつて、夕張観光案内センターが発行していた、キネマ街道の絵看板を紹介するパンフレットがあります。このパンフレットには、48枚の絵看板がありました。
キネマ街道の絵看板については、その内訳を示す資料が見つかりません。
完全に網羅するものではありませんが、このパンフレットに掲載されている映画をリスト化して、資料の手掛かりにしようかと思います。
本町2丁目
- 羅生門
- 狼の挽歌
- クレオパトラ
- 史上最大の作戦
- カサブランカ
- 帰らざる河
- シャレード
- ジャイアンツ
- 狼よさらば
- 地下室のメロディー
- 用心棒
本町3丁目
- マイフェアレディ
- 日本侠客伝
- 悪名
- 花と竜
- 誰がために鐘は鳴る
- カルメン故郷に帰る
- 男はつらいよ 寅次郎恋歌
- 男はつらいよ 知床慕情
- 伊豆の踊子
- シェーン
- ローマの休日
- 明日に向かって撃て
- 東京物語
- 荒野の七人
- 喜びも悲しみも幾歳月
- 黒部の太陽
- 猿の惑星
- 赤い波止場
- 悲しき口笛
- 秋刀魚の味
- 網走番外地 南国の対決
- 太陽がいっぱい
本町4・5丁目
- 七人の侍
- ダイハード
- ゴルゴ13 九竜の首
- 君の名は(1953年)
- 哀愁
- 遠き落日
- 心の旅路
- 瞼の母
- 南太平洋
- サウンドオブミュージック
- 長崎ぶらぶら節
- 東京物語
- 白昼の無頼漢
- 007 ドクターノオ
- 次郎長富士
この一覧を見ると、『幸福の黄色いハンカチ』とか『新幹線大爆破』といった夕張市内でロケ撮影した有名作品がラインナップされていないのが、ちょっと残念ですね。
パンフレット作成時には、撤去されていた可能性もあるのですが……
町おこし的な使い方をするのであれば、強引にでも夕張市内で撮影された作品は網羅してほしかったし、なんなら撮影場所に看板を設置すれば良いのにと思ったりもしました。
そういう意味でも、作品の選定に関する基準も「中田市長が選んだ」という発言だけでなく、どういう経緯で選抜され、決定されたのかという資料を見てみたいです。
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