著者の桜木知沙子が札幌出身ってことで読んでみた。そしたら、この作品の舞台も札幌だった。
知ってる地名――実際に訪れ、生活し、息づいている街だからかもしれないが、情景はとてもリアルに感じられた。
登場人物たちが歩いている風景が、不思議なまでに自分がかつて歩んできた風景と重なっている。
そうか、これってオレがアイツと一緒に歩いた場所なんだ、と気付くのに、さほど時間はかからなかった。
物語を読み進めていくと、細かいディティールこそ異なるが、驚くほどオレとアイツが過ごした時間とそっくりだった。
そう、あのときの辛い選択をするときまでも……。
小樽でマジな気持ちを知ったとき、まさにオレも同じ感情を抱いていて……泣いた。
電車の中で人目もはばからずに、泣いた――
――っていうのは、全部、ネタなんだけどな~(笑)。
以下、マジメに感想文を書きます。
前に読んだ『委員長のキケンな放課後』とは、かなり趣を異にしている、と思った。
あんまりHなシーンもなかったし、なによりコメディではないってのが大きい。
恋愛モノなんだけど、紀弘と小栗のオトコとオトコの禁断の恋愛ってのを、わりとマジメに書いていたと思うよ。
さっきは上の方でジョークで使わせてもらったけど、『PARADISE LOST』にて、小樽で紀弘のマジな気持ちを知っちゃったあとの別れのシーンなんて、けっこうグッとくるというか切ない気持ちになったし。
それと薫子というオンナのキャラとの三角関係ってのも、オレ的には目新しかった。一人のオトコをオトコとオンナが取り合うの。
まあ、ネタばれるまでもないだろうけど、BLなんだからオトコが勝つんだけどね。
でも、紀弘が「オトコとオトコの禁断の恋愛」に悩みながら、世間体や義理立てでオンナのコに本当のことを話せない苦しみとか、普通の三角関係モノとは違った読み応えがあった。
ただ、BLってせいなのか薫子がダーティな役回りになっていたのは、オレ的にはちょっと可愛そうな気がした。
結果として恋敵になるのだが、それにまったく気付かないってのは……薫子って才色兼備なキャラのはずなのに、実際にはバカなだけのような気が……。
最後はキレて背中からブスリだしな。ダメダメキャラじゃん。
オレ的には、そのバカっぷりも含めて終始一貫して薫子の味方だったんだけどね。
んで、攻め役の小栗なんだけど。
こいつも『委員長のキケンな放課後』の矢ヶ崎同様、やっぱりイケメンで、ガタイが良くて、喧嘩が強くて、斜に構えてるけど身体は綺麗(前科や薬物使用歴はない)で、Hが上手で、お金持ちの子息だった。オマケに高学歴。
まあ、人間に価値というか偏差値があるとしたら、こういう人間は高価値だよな、と普通に納得。
そういえば、もう一点『委員長のキケンな放課後』と共通点として、攻め役は家庭が崩壊していて母親がいない。
BLは2作しか読んでないけど、2作とも母親不在だった。
母親不在ってのはBLの攻め役にとって、なんか重要なファクターなんだろうか? これは『ボーイズラブ小説の書き方』には書いてなかったぞ。
というわけで総論として。
「オトコとオトコの禁断の恋愛」に関して、わりとまじめに悩んだり苦しんだりする過程ってのが、かなり興味深く読めた。その点だけでも、この作品はオモシロイと思う。
しかも、舞台が札幌なので個人的に、なんとなく思い入れみたいのがわいてくるし。
ただ、最終的には大団円で終わるものの、都合の良すぎる薫子の扱いには釈然とはしないが。
あ、今思い出したんだけど。
「オトコとオトコの禁断の恋愛」といえば、『NINETEEN』のマスターの番外編がおもしろかったな、という記憶がある。
っていうか、あっちは青年誌らしく終始オトコの視点で書かれていて、かなり切ない話だったけど。
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