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同人サークルA-COLORが北海道をうろうろしながら書いているブログです

午前二時の使者

2005-04-24 23:12:55 | 日記

kairou04_031-054 午前二時の使者 著:遥彼方
(【回廊】第4号)

我々とは異なる夜の世界に迷い込んでしまった作家の話。
闇の世界でありながらも、どこか微笑ましく愛嬌のある夜の世界の住人達の姿に、ほのぼのファンタジーな印象があったのだが……最後の最後でどんでん返し。不条理な恐怖に突き落とされる。

不条理は不条理なのだから道理なんてのはないのかもしれないが、それでもなんとなく納得できない不条理な違和感みたいなものがないわけではない。
例えばの話なのだが。
主人公の作家は、冒頭で原稿がアップできなくて困っているのだが。

ほとんど興味の無い分野の話だ、書きたいことなんて最初から無いのだけれど

書きたくなくても書かないといけないときってのは仕事なら確実にあるし、ある意味、理屈にかなってはいると思う。
でも、もっと内面的な悩み――端的に言ってしまえば、夜の世界に招かれてしまうような不条理な悩み――を読者に提示できていれば、最後の不条理が納得できる不条理になっていたかも知れない。
まあ、納得できる不条理って自己矛盾した言葉だけどね。
それと書けない彼の下に「創造の女神が降りてこない」とあったが、仕事のために書く(商業主義とは違う)作家のところに創造の女神ってのは――ちょっと思い上がってる作家だな、と思わなくもなかった。
……と書いたところで、「創造の女神」も「夜の世界の案内役になる老人」も共にこちらの世界とは異なる住人である。その異なる世界の住人がやってくるという伏線だったのかもしれんなぁ、と深読みしてみたりもしたがいかがなもんか。

夜の世界を象徴したランドマークとして、コンビニが出てきたのは良いアイデアだと思った。
数年前、田舎で暮らしているときって、夜になったらコンビニしか開いている店がなかった(っていか、夜の9時を過ぎたら駅前以外はほとんど闇になってしまう……)。
だからこそ夜になったらコンビニに行くというか、コンビニしか自分の消費欲求を満たせないというか、ぶっちゃけコンビニの明かりを頼りにするしかない、っていう状況だった。

>だが二十四時間営業のコンビニはそんな夜を引き裂いて、不動産屋の角を曲がった辺りに煌々と光を撒きちらしながら建っている。

だから、この表現っていうか気持ちってすごく共感できた。
それゆえに

>点滅する街灯の明かりの中に、コンビニは影も形も無かった

のに恐怖を感じたし、夜の世界にもあるコンビニにこそが逆説的に夜の世界の象徴に思えた。
っていうか、今後はファミレスやスーパーマーケットも建つだろうし、ATMもあるから夜の世界も快適かもね。

んで、最後に夜の世界の住人にも触れる。
影しかないソヨギのキャラは面白かった。

>顔を持たない影法師たちは、泣いたり笑ったりする事が出来ない分、動作と声で感情を表すのだろう

特に、このアイデアが良かった。どっかに出典があるのかもしれないけど、オレはこういうのを知らなかったので「あ~、こういうのもあるんだな」と感心したし、なんかソヨギが自分にとって身近っていうか、存在感のあるキャラになった。
そんなわけで、こういうキャラたちが織りなす夜の世界だからこそ、ラストの不条理に恐怖がよりいっそう引き立つのだが。
なにしろ50ページだもんな……編集者並びに編集部の方々にはお見舞い申し上げます。


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