川のほとりのパーバーション 著:星野慎吾
(【回廊】第4号)
同人小説の作家が、同棲している年上の美人のオネーサン・麻子と、共通の趣味を持つ内気で可愛い女の子・里奈との三角関係になってしまう。
麻子はカワイ美人系で洒脱で明るい性格なのだが、どこかで一線を引くミステリアスな女性。これでオレに萌えるなというのが無理な話。
一方の里奈は可愛くて、何故か主人公に最初から好意を持っている文学少女。
だいたい、この手のシチュエーションの場合、同棲側にナニかあるっていうヲタっぽい推測の元に読み進めていたら……。
オネーサン属性のオレとしては、「同棲側が美人のオネーサン」という点に不安を抱いていたのだが……酒の上でとはいえ、どうしてそうなるかなッ! と主人公に一喝したくなった。
まあ、でも、「萌えるシチュエーション」という基本パターンを踏襲しているので、ラストのオチも納得できたし、それゆえに麻子への萌えがより高まった。
失ってから激しく後悔する主人公のガッカリ感にも同意できた。
……が、しかし。この作品には、最後にもう一つのオチがある。
この最後のオチが、ある意味では「萌えるシチュエーション」を補完するアイテムになろうとしているのだが……ただ、ドーンと突き放したような落とし方なので、どこか釈然としないのも事実。
萌える三角関係としてはおもしろく読めた。
後日追記
ちょっと追記しておこっと。
>何故か主人公に最初から好意を持っている文学少女
とりあえず主人公はヒロインに好意の眼差しを向けられてるってのは王道みたいなもんだから、オレはあんまり深く考えなかったな。
っていうか、
>お互い個人サークルとしてイベントに出た際、顔を合わせることもあり、作品を読んだこともあった
>同じサークルで、即売会に出ようと話しを持ちかけたのは、里奈だった
なんか、もうこのへんで「里奈は密かに主人公に好意を持っていたんだな! 実は主人公が知らないだけで、彼女は大学に入った時から彼を知っていて、そのきっかけは……」とヲタ妄想が拡がったりする。
っていうかオチにまで言及すれば、あえて関係性の描写を希薄にした方がオチにいたったときに物語の破綻がなくなると思うし。
いや、もちろん語るべきを語って、物語を構築するのならそれに越したことはないんだけど。
んで、最後のオチだけど。
読んだ直後は「なんじゃこりゃ?」と思ったのは事実。
しかし、日を置いてヲタ妄想を拡げると、あれやこれやと浮かんでは消えきたりもする。
でも、やっぱり読者は分かりやすいオチを求めるもんだ。男女間の問題だけに、なんらかの納得できる結論――結末ではなくて、結末に至る事実を含めて――があった方がスッキリ感はあったはずだ。
ただし、スッキリ感があることと、作品が優れていることはイコールではない。
あくまでも『ウィングマン』や『きまぐれオレンジロード』のラストに納得したオールドタイプなオレには、そう感じられたっていう程度のヲタの戯言なんだけど。
僕はスッキリ感を出すような演出が、まだまだでした。たとえば、他所で指摘をいただいたように、もう少し伏線を練ったり、イベントを効果的に表現したりなど、粗が見えてきてしまうわけで、この「オチ」を完全に消化しきれなかったことにも、あぼさんがスッキリ感を得られなかった一因があったりしたのかもと思いました。
長編をいくつも書いていらっしゃるあぼさんのコメントは、とても勉強になります。今度ともよろしくお願いいたします~~。
次号の作品も楽しみにしておりますよ。