アンの「ややこしいこと言わんといて」

ええかげんなややこしいおっさんが日々の分泌(文筆)物をたれ流します
臭~さいぞ

「陽子や」 一目見てすぐにわかった

2013年04月02日 22時33分02秒 | 創作

「陽子や」
一目見てすぐにわかった

何か棚の上の物を取ろうとしている
僕は、気づかれない様にそっと近づきワザと同じ物に手をのばした

手がふれた

「スミマセン」

陽子があやまり、目があった

彼女、こんなに綺麗やったっけ?!

大きな目をいっぱいに開き、口からは、あっ と声がもれた

「淳?!」

彼女の財布から小銭が転げ落ちた
2人で拾い集めるうちに彼女が笑い始め、僕もつられて笑った
お互いによく笑った、あの頃みたいに…

彼女が少し時間がある、と言うので2人で缶ビールを買い近くの公園のベンチに座った
見上げると桜が満開で気持ちがいい

何年ぶりやろう、それからと言うものせきを切ったようによくしゃべった

彼女のこと、昔の仲間のこと、僕のこと
彼女はやさしいご主人とこの町で暮らしている
保育園に通うやんちゃな男の子の母になったこと、今はとても幸せでいること
昔と変わらず彼女はよく笑った

そう、彼女は昔より今のほうが綺麗だ

少し、話が途切れた時、
「もう、子供が帰ってくる時間やわ」

彼女は僕の手の甲にそっと自分の手のひらを重ねた
しばらくじっとしていた

送って行こうか?と聞くと、ここでいい、と
僕は座ったまま、じゃあ と手を振った、連絡も聞かずに

今迄いた彼女のベンチを見ながら、もう一本缶ビールの栓をあけた

見上げた桜はとても綺麗だった