船底にぎゅうぎゅう詰めで座らされ、財産も、身内も無くし、食うや食わずで身一つ、命だけ持って日本に帰る人達の話
そんな中、蒸し暑さと空腹で疲れはピークに達したころ、些細なことで帰還兵どうしが喧嘩を始めた
そのうち、1人がナイフを取り出し、どちらかが大けがするのが必至の状態になってしまった
さーその時
1人の女の人がこの「朧月夜」を歌いだした
菜の花畠(ばたけ)に 入り日薄れ
見わたす山の端(は) 霞(かすみ)ふかし
春風そよふく 空を見れば
夕月(ゆうづき)かかりて におい淡(あわ)し
どんな思いで皆はこの歌を聞いたやろう
戦争にも負け、何もかも無くし、残ったのは、命だけ
まさしく絶望のど真ん中
でも皆はこの歌で故郷の景色を思い出したんとちゃうかな
しかも、明るい昼日中の太陽と違って、お月さん、それも朧月。
何となく、気持ちが優しくなるよな。
故郷に帰って、1からやり直そーと、かすかな希望が見えたんとちゃうかな
最初は1人歌い出したのが、2人3人と歌い出し、全員が歌ったそうな
結局、喧嘩をしてた兵隊も情けなくなって泣き出して、誰も怪我せずに済んだらしい
しかし、あらためてこの歌、綺麗な歌詞と素晴らしいメロディやな
心が洗われるよーな
豊な気持ちになるよーな
さあっ 皆も歌いましょか
♪ 菜のは~な ばたけ~に 入り~日 薄れ~ ♪
♪ 見わた~す山の~は かーすーみ ふかし~ ♪