「1人と一匹」
2X15,02,14
「わっムカデ!なんでおまえがここのいてるん?」
「殺虫剤、殺虫剤って積んでるわけないか…」
気づいた時にはすでに物陰に隠れてどこに行ったか見失ってしまった
わたしは宅配業を昨年から始めたばかり、ちょうど手ごろなリース落ちの船が出ていたので思い切って始めてみた
船とはもちろん宇宙船のことである、地球上では10トンの荷物を1度に打ち上げることが出来る、もちろん宇宙に出てしまえば10トンだろうが100トンだろうが0kgだが
ここ数年、月は建設ラッシュである、各国の大企業がこぞって生産設備やら実験施設を建てている
わたしはその好景気に乗っかって一儲けと、もともと宇宙に出るのも好きだしこれは一石二鳥とばかりに始めた
しかし危険がまったく無いわけでもない、今のように月へは気軽に行けるようになったとはいえ、こんなムカデ一匹でも刺されでもしたら、1人パイロットの船、誰も助けてもらえず永遠に宇宙を旅することになるかもしれない
でもそこは1人身、気楽なもんである
「せっかくのバレンタインデーにこの狭いコックピットでよりにもよって1人と一匹か、どうせどこかの荷物にくっついてきたんやろ・・・
悪いけど今度みつけたら殺させてもらうわ、踏み潰すしかないか」
船が成層圏を出るまでは一応安全のため、わたしはシートに座っているが外に出た後は3畳間ほどのコックピットでうろうろと仕事の準備をしたり帳面をつけたり時間があまればコーヒーでも飲みながら本を読んだりして航海を楽しむ、月までは自動操縦で何も心配はいらない・・・ はずだった
2X15,02,15
「♪♪あのころ 2人のアパートは 裸電球まぶしくて~♪♪ かー」
「♪♪貨物列車が通ると揺れた 2人に似合いの部屋でした♪♪かー」
「ん? あれ何? アカン!Deep Impactや!!!」
わたしはとっさに月への周回軌道を離脱したhttp://youtu.be/bU1QPtOZQZU
その衝撃は恐ろしく最初のインパクトで飛び散った噴石はおそらく月にまで届いてるだろう
わたしはまさしく危機一髪で逃げることが出来た
しかし、帰るべき故郷はすでに火の海である、あの状態では人類どころかありとあらゆる生物が絶滅しているだろう
わたしは起こった事実を受け止めるのに3日3晩悩みつづけた、そして極めて冷静に置かれた状況を整理し結論をだした
「このままこの船で生活するのに食糧、酸素ともに1年分か…」
「この非常用カプセルに入って冬眠状態で300年後にお目覚めか…」
「設計上は300年後に目覚めるってなってるけど誰か試したんやろか?」
「あっムカデ!」
例のムカデが突然現れ、わたしはとっさに踏みつけようと足をだしたが…
殺すのをやめた
「おまえもムカデの最後の1匹かもしれんな」
あんなに嫌いだったムカデも今となってはいとおしく感じた
「ほんじゃあ、いっしょにカプセルに入るか、♪♪貨物列車が通ると揺れた 1人と一匹に似合いの部屋でした♪♪かー」
ムカデをペット用の更に小さいカプセルに入れスイッチを入れた
300年後、地球が1人と一匹の暮らせる環境にもどっていることを願って
