こちらの上の2枚の御写真は、明治5年(1872)9月3日に、束帯姿の
明治天皇と御一緒の時に内田九一によって撮影された昭憲皇太后のよく
知られた小袿姿に、檜扇を開いた御写真です。現在の皇室には、見られ
ない、とても印象的な御写真です。
では、昭憲皇太后はどんな色の小袿を御召しになられているでしょう
か。白黒の御写真ですし、この小袿についての詳しい記録はないようで
すが、文様は、はっきりと写っていますのでそこから、説明をします。
文様は向鸚鵡(むかいオウム)の丸文。これは皇后が御召しになられる
小袿などの正式な文様で上文です。つまり二陪織物ですが地文は、御写
真からでは残念ながら分かりません。しかし、同じような小袿が遺され
ています。
こちらの小袿は、昭憲皇太后が、賢所へ、御参拝のさいに御召しにな
られたもので御写真と同じ鸚鵡(オウム)の丸の上文の二陪織物です。
そしてもう一領は、
こちらの小袿は孝明天皇妃の英照皇太后が、御召しになられたもので
昭憲皇太后の小袿と同じ向鸚鵡(むかいオウム)の丸を上文とした二陪織
物です。昭憲皇太后と英照皇太后の御二方とも小葵文様を地文様とし、
向鸚鵡の丸を白と萌黄の段が替わりとした、二陪織物です。御写真では
白の向鸚鵡の丸文が、はっきりと写っていますが、もう一つの丸文はよ
く分かりませんが、御二方とも、白と萌黄の色ですので、御写真も同じ
だと思います。そして、小袿の地色は恐らく赤系だと思われます。
次に大きく広げていらっしゃる檜扇ですが、近代の皇室の檜扇の絵は
雲取りに、大和絵風に松竹梅などが描かれるのが慣例となっているよう
です。
二握の檜扇は、昭憲皇太后の御使用されたものです。2番目の檜扇が
御写真の檜扇に近いかと思いますが、もう一握、御紹介します。
こちらは、英照皇太后が御持ちになられた檜扇で、シロガネ的には、
この檜扇が、一番近いかと思います。
同じモチーフの絵柄ですが三握とも、それぞれ配置などが微妙に違い
とても興味深いです。