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シロガネの草子

「我が身をたどる姫宮」 その7 


 こうして、ご姉弟同士でお会いになられると、姫宮様は、長い夢から目覚めたという心持ちですが、しかし感傷に浸っている、いとまは、ありません。姫宮様も、自身の「離婚」というのは、近代かつてないのは、承知していました。すんなりゆくとは、とても思えないのは、十分理解出来ていました。


 なにより、K氏が、承諾するとは、思えませんし、当然「お母様」も同様です。息子と不和となったからといって、絶対に自分を手放すとは、思えなかったからです。


 子供達の問題もあります。姫宮様は、なんとしてもK氏と「お母様」が、皇室の血を受け継ぐ、子供達を利用しないよう、自身の手元で育て上げるつもりでいました。その事は、ご両親殿下にも妹宮様にも、きちんと伝えていました。



 例え、自身の一方的な「純愛」であり、K氏は、自分を利用する為だけだったとしても、それでもK氏を深く愛し、その証である子供達には、姫宮様は、やはり深い愛情が、あるのです。心を病んでしまった時、子供達には、辛い思いをさせてしまったうえ、今後も好奇な目で、みられるであろう子供達には、姫宮様自身、深い自責の念が、ありました。



 何としても弟宮様・・・・現在は、宮号を賜っておられ、そして将来天皇に成られる、宮殿下のお力が必要でした。


 宮殿下の宮号は、江戸時代の光格天皇の御実家と同じ、宮号でした。その宮家は、既に断家となっていましたが、何といっても現在の皇室の御直系の光格天皇の御生家ですし、弟宮様が、ご成年の際に、この宮号を賜った時、多くの人達が、次の天皇は、皇嗣家の若宮殿下になられると思ったものです。例え皇太子にならなくとも、光格天皇と同じく、先帝の御跡を継ぐ形で、天皇にならるのは、皇室の前例としてそのまま踏襲するだけの事ですので、別段問題もないわけです。
 これは、女性天皇も同じなわけですが。女性天皇の根拠は、皇室にかつて女性の天皇がいたという、過去の例を挙げられている訳ですら、宮家のご出身の若宮殿下が、過去の光格天皇の時と、同じく皇太子にならずして、天皇となるというのは・・・・・・故高松宮妃殿下の言葉を、お借りすれば、
「・・・・・長い日本の歴史に鑑みて決して不自然な事では、ないと存じます」
・・・・・という訳です。


 皇室の長い歴史はで、さまざまな出来事が、あり、その時その時で、上手く対応しながら、続いてきたのですから、宮殿下のような、お立場で、天皇になるというのは、別段珍しくは、ないのです。
 姫宮様の例は、近代では、かつて例のないのかも、知れませんが、御水尾天皇の皇女の梅宮の時の様に、全くなかったという訳では、ないのです。姫宮様もその事は、きちんと調べておいででした。


 宮殿下に、姫宮様は、K氏とは、別れるが、しかし「離婚」は、今の現状のままでは、出来ないことは、十分に承知している。子供達は自分が育てるが、姓は、K氏のままで、なければならないというのも、分かっていると伝えて、世間的な「別居」という形になるが、自分としては、「夜離れ」(よばれ・平安時代の別居婚、事実上の離婚)という言葉を使って、今後その事を、世間にも公表したいと、伝えてられました。


 宮殿下は、この言葉を、ご存じでしたので、今どき、良くこんな言葉を使かおうと、思い付いたね。令和の御代に「夜離れ」なんていう言葉を、使って別居宣言するなんて、「大姉様」くらいなもんだよと、おっしゃって、声を出してお笑いになられました。


 妹宮は、「夜離れ」なんて聞いても、直ぐに、分からない人は、多いからちゃんと、キチンと注約を付け加えないとね・・・・・と言われて面白がられておいでで、お姉様はいつ、「蜻蛉日記」を読まれたのと、姫宮様に聞かれて、笑っておいででした。


余り良い、出来事でご姉弟同士が、集まわれた訳では、ありませんし、今後、大きな波乱があるのですが、しかし、こうして昔に返られた心持ちで、屈託なくご姉弟が、話し合いをされたのは、お互いの絆をあらたに確認するという意味で、大切な事でした。


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「 その後は、お三方は、昔の様に打ち解けて、時々、笑いも交えて、さまざまな事を、話し合われたと言う事です。そしてその時、宮殿下から、姉宮方にある事を、伝えられました。姫宮方は、この事を聞かれて、今後の皇室に、大きく影響する事は、間違いだろうと思われた、という事です。しかしその前に・・・・・」

 姉弟方がなごやかに話しても、笑い話では済まない問題は、あります。それは、持参金の問題です。今どき、離婚や、別居など、別に珍しくも何ともない、話ですが、姫宮様には、K氏との結婚に際して二億円もの持参金が、国庫から支払われました。それは、すなわち、国民の税金でもあるのです。
 いくら、姫宮様は、今は、一般人になられて、一般人と同じく、夫たるK氏と別れても、国民はそうは、納得はしないでしょう。姫宮様は、この問題は当然、世間から、非難に近い言葉を浴びせられる事は、誰に言われるでもなく、承知していました。自身の選択の誤りを今更ながら痛感しておりました。
・・・・・本当にとんでもない、男と一緒になってしまった。持参金を自身の為に使った事、あの人は、私が、思うほど深刻には、考えては、いないでしょうけど・・・・と姫宮様は、そう思いました。


 持参金は、あくまでも、姫宮様が元皇族としての品位を維持する為の、ものであって、決してK氏のお金では、ないのです。・・・・・しかし結婚当時からこのお金は、相当K氏や、「お母様」が、使い込んでいるという噂が流れていました。勿論その事は、既に何度かネットにも流され、記事にも書かれていましたので、多くの国民も知っています。 
 持参金は、姫宮様名義で、振り込まれたもので、もし、噂が本当なら、姫宮様の承諾なくしては、使える金ではないのです。もし、事実であれば、国民は相当反発するでしょうし、その金銭を管理している筈の、姫宮様も同じく、国民から非難されるのは、当然といえるでしょう。その非難は、間違いなく皇嗣家へと向かうのは、皆様方、長年の経験上、良く分かっておりました。


 「皇嗣家のゴシップは、例え事実でもそうでなくとも、うちらにとっては、飯の種だーーー!今日も、明日も、明後日も種を貰いに行くぜ~~!!」
(皇嗣家常連のはなはだ迷惑なお客様・・・・)


 宮殿下も、その噂は、ご存知のうえ、皇嗣両殿下方からも、それは事実らしいと、聞かれており、何と無しに想像は、出来ていましたから、怒ろうとも思わず、姫宮様に、持参金は、ちゃんと管理していたのか、今、どれくらい、残っているのかなどと改めて、お聞きになられました。


 姫宮様から出たお答えは・・・・・・事実で間違いない。今の持参金の残高は、600万と少しだと、答えられました。姫宮様も、この事はもう、ご家族からも非難されるのは、覚悟のうえでした。


 ・・・・・15年で、二億円が、600万・・・・やはり、そうだったのかと、宮殿下は、思いました。
 姫宮様は、ただ黙ってうつ向いておられました。姫宮様とK氏が結婚する前から、持参金目当てでは、ないかと言われていましたが、いざ、こうして現実を当人から聞かれると、どれだけ、世間から非難されても一途に、K氏との結婚を諦めず、K氏への想いを貫いた上の、今の姉宮様の表情のを見ると、やはり弟として、痛ましく思うのでした。


 それで、二億もあった持参金は、本当にあの二人が、使ってしまったのかと、そして、「大姉様」は、2人の言うままに、考え無しに、国民からの血税を渡してしまったのかと・・・・・少し意地の悪い言い方で、宮殿下は、姫宮様に、聞かれました。
 心のなかでは、弟として、姉宮を可哀想とは、思っても口から出る姉宮様への言葉は、まだツンツンした言葉が、出てしまう、宮殿下なのです。もっとも、この事に関しては、姫宮様にも非があるのは、間違いない事なのです。


 姫宮様は、話されました。・・・・・持参金は、自身の元いた立場に相応しい品位を保つ為の国からと、国民からの配慮と願いであって、それは、おもう様、おたた様からも幾度も言われていたし、自分もその事を忘れた事は、一度もない。ましてや、あれだけ世間から非難された自分が、あれだけの持参金を頂けるなんて思ってもいなかった。


 おもう様は、相当無理をなさってあれだけの額の持参金を、用意出来るようにしてくれたのは、今でも心から感謝しているしる。でも、そのせいで宮内庁との折り合いが、また悪くなったし、世間からも相当な非難を浴びたのも、良く分かっている。


 でも、私以上に、皇室内にいた、宮様方のあなた達が、私達のせいで、辛い思いをされたでしょう・・・・・と、姫宮様は、弟宮様や、妹宮様方の方にご覧になられて言われました。


 姫宮様は、K氏と結婚した後、ずっと、東京を離れて地方で暮らしておりました。世間の目から離れたいという思いも、ありましたし、ご自分が育った環境、それは、御用地のような自然豊かな環境で暮らしたいという思いからでした。結婚前、今後の暮らしについて、K氏と話し合った時、その話をしたとき、K氏もそれでいいと言ってくれたのでした。もっとも「お母様」もその方が良いという、言葉付きで。
 色々と検討した結果、豪雪地域と呼ばれる所でしたが、バブル時代に建てられたリゾートマンション、そこがバブル崩壊後に価格が相当下がり、安くなっていると、テレビ等で知った、姫宮様は、ここならどうか、提案しました。K氏も駅から近くなら良いと言っただけで、別段異論は、なくそれから姫宮様は、周囲とも相談した上でここならというマンションを、選ばれました。駅からも車で15分程度だし、雪の場合は、バスに乗ればいいと、思いその事もK氏に伝えてましたが、返事は、それで構わないとの事でした。 




 そして姫宮様は、密かに宮家の職員と共に、下見に行かれました。リゾートマンションとは、いっても人がちゃんと生活出来るような部屋になっておりましたし、景色もとても良く、バブル時代の建物でしたので、建物の質も良く、雪が降る場所でしたので、建物の構造もしっかりしているという事でした。



 姫宮様は、将来子供に恵まれても、この自然豊かな環境なら大丈夫だろうと、考えました。豪雪と言われる地域でしたから、雪の降る時期など、今までとの環境との大きな変化に、戸惑うかも知れないが、これまで、色々と言われても耐えて、こうして乗りきって来たのだから、大丈夫だろうという思いを、あらたにされて、K氏との今後の生活に思いを馳せたのでした。


 K氏もネットで、そのマンションを調べてそこが良いと、言いましたが、「お母様」も同じマンションで暮らしたいとの事で、こちらも幸いに、同マンション内に空きがあり、そちらに暮らせる様に、つまり二部屋を、確保する事となったのです。姫宮様は、「お母様」とは、同居か、もしくは、直ぐ側で、暮らすことになるとは、当然と思っておりましたので、何の異存もなく、むしろ同じマンション内で行き来する事を喜んでいたのでした。もっともいつもK氏の心には「お母様」への思いが強くあるのを、姫宮様は内心では、いつも「お母様」への嫉妬めいた思いもあったのですが・・・・・。



 しかし、結婚の準備に忙しく日々を送っていたときに、いきなり、K氏が、駅の近くで、もっといいマンションが、売りに出された、そこにしよう、そこがいいと、言ってきたのです。


 そのマンションは、バブル時代は、数億で売りに出されたマンションで、値段は相当下がっていても、数千万は、するものでした。最高級のリゾートマンションと呼ばれるもので、建物内では温泉が引かれて、施設もあり、「セレブ」向けという感じで、確かに部屋数もあり、中の造りも豪華でしたが、姫宮様好みというものでは、有りませんでした。
 あまりにも、あからさま過ぎると、姫宮様もそこを調べた時、そう思いましたが、K氏は、兎に角、ここの方が良いと言い張りました。


 そして「お母様」も宮様が、お住みになられるのは、ここが一番でございます。こちらちに住んで頂けたら、わたくし共も、安心出来ます。どうか、どうかK氏の願いを聞いて上げて下さいと、頼み込まれて、しまいました。
「お母様」は、宮様のお立場や、安全性等も考慮してK氏が、そこに決めたのだと言い、宮様の事を一番に、考えているのは、ご家族を除いて、K氏だと強く主張し、信じてあげて欲しいと言ったのでした。


 姫宮様は、自分と結婚する事に、なったせいで、世間から色々とK氏母子が、さまざまな事を言われてしまったという、負い目もあり、そのK氏が主張するマンションの方に決められたのでした。
 数千万という事でしたが、持参金を一度に使う事は、姫宮様は、望んでいませんでしたので、一括では、購入はせず分割払いで、購入することに決めたのでした。


やがて、多く国民が、釈然としないまま、姫宮様とK氏とのご結婚が行われました。姫宮様は、K氏とやっと結婚出来る喜びを正直に現していましたが、ご家族は、そうではありませんでした。テレビに映っているいる間は、無難に努めているようでしたが、矢張色々と見えてしまうものです。


 特に皇嗣妃殿下は、姫宮様の結婚には、最後まで反対でしたし、住まいも姫宮様が、決めた所を、K氏は、いきなり変更を求めるなどで、姫宮様に任せると言っておきながら、そんな事を言い出すので、本当に「誠意」と「誠実」というのが、欠けている様にしか、見えませんでした。姫宮様には、長い間かかったゴールと始まりでしたが、母君の妃殿下には、これから自分の娘が、不幸になる第一歩にしか、見えませんでした。


 皇嗣妃殿下は結婚前に、姫宮様に静かに、こうおっしゃいました。・・・・恋愛の期間に泣くよりも、結婚後に、泣く事の方が多いのです。そして、その時の、夫の態度や、言葉がその後の夫婦の道を決めるのですよと・・・・・そう、言われたのです。



 皇嗣殿下とご結婚された後、さまざまな辛い思いをされてこられ、そして、皇嗣殿下に支えられて歩んでこられた、妃殿下だからこそ、言える言葉でした。


 それを聞いた時、姫宮様は、K氏と自分はそういう時になれば、また絆が深くなるだろうと、希望に満ちていらっしゃいましたが、しかしその後、母君のそのお言葉が、嫌でも実感として思い出されてる日が来るのくるのでした。


 しばらくは、世間から注目され続けてきましたが、やがて落ち着き始め、姫宮様とK氏は、やっと二人の生活が送れると、互いに幸福を感じて日々を送っておりました。


 「お母様」は、しばらくは東京にいる事となっていましたが、やがて、姫宮様が、懐妊された後、同じマンションに同居を始めました。


 マンションは、1階と2階とある大変豪華な部屋で、いかにも「セレブ」という生活の場でした。K氏はそのマンションを大層気に入っており、度々、女友達などを呼んだりしておりましたが、姫宮様は、最初は別に対して気にも止めていませんでした。K氏からは、友人関係の事は、聞いておりましたし、わざわざこんな遠く迄と思い、精一杯のおもてなしをしましたが、そういう姫宮様の態度に友人達は大層、誉めたりして、姫宮様は、とても嬉しく思ったものでした。


 マンションは、広く姫宮様の手には、余るので、通いのお手伝いさんを雇って、家事などを一緒にしたり、お互いに協力しながら、さまざまな経験を積んでいったのです。もともと順応性が、高いご性格でしょうか、お手伝いさんは、地元の出身でしたので、この地域の事などを聞いたりして、姫宮様は、珍しい所などを、K氏と一緒に出掛けたりして、都会とは、違う新しい環境にだんだん馴染んでゆきました。


 また、こちらの方は、都会から移って来た人や、老後は、こちらで過ごそうと、定年退職した夫婦が移り住んで来たりしました。実は姫宮様は、豪雪と呼ばれる地域でも、ここに住もうと、思った一つは元宮内庁に長年勤め、定年退職した人が、自然豊かで、なおかつ値段の安いマンションのある、ここに移り住んでしたのでした。退職したといってもやはり、誰も知らない人ばかりよりはと、姫宮様は、思い、ご両親殿下にも相談しました。皇嗣両殿下も、その方が、何か合った時など、相談も出来るだろうと言われ、そちらに住むこと自体は、反対は、いたしませんでした。しかし、その人達は、もう退職し、あなたも、民間人となるのだから、不必要な迷惑を、かけない様にしなさいと、釘を刺すことも、忘れませんでした。
 姫宮様の意見は、大方賛同なさいましたが、K氏が、熱心に進めた、二人が住まうマンションは、若い二人には、豪華過ぎるし、ましてや、そのマンション代は、二人で稼いだ金で買うのでは、ないのだから、分相応過ぎると言われました。


 それならと、一括払い出なく分割払いで、する事にしたのでした。これは、K氏の発案出なく、姫宮様の意志でした。姫宮様もそのマンションは、やはり豪華な過ぎる、出来るだけ普通の部屋の方がいいと思っておりましたし、自身の持参金が、どういうものかは、良く分かっておられたからでした。



 姫宮様は結婚後、間もなく、めでたく懐妊されました。K氏は、早く姫宮様との子供が、欲しいと言っておりましたから、姫宮様から知らされた時は、大変喜びました。


 そして真っ先に、「お母様」へメールで知らせました。もちろん、その知らせを受けた「お母様」は、大喜びして・・・・・それからしばらくして・・・・・宮様は、ご実家から遠く離れて心細いでしょうからと、マンションへと何日も泊まる様になりました。


 姫宮様は、ご実家の皇嗣家にも知らせました。自分の懐妊がまだK氏と「お母様」にわだかまりを持つ、皇嗣両殿下のお心を軟化してくれるだろうという期待も、ありました。


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「姫宮様の懐妊の知らせは、皇嗣家にも知らせましたが、まだ馴れないうちで、少し、早いのだろうかと、思ったとの事ですが、両殿下共に初孫が誕生するのを心より喜んでいたとの事です。妹宮様も大喜びでしたが、まだ十代半ばの若宮様は、この年でもう、おじさんになるのかと、やや複雑な気持ちになったそうです」


その8に続きます。  

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