少子化は、進学競争の難度低下をも伴う
極めて重要な課題
⇒ マーケッテイング・エリアを世界に拡大する必要性
皆様のご清栄をお慶び致します。
さて、最近の新聞を読んでいますと、日本国内の人口や労働力の減少、そしてそれを補うアジア各国からの若者たちの流入の増大などが、頻繁に話題になっています。
建設業やサービス業、農業・製造業分野等を含め、取り分け、介護福祉事業分野での労働力不足は深刻な状況で、官民一体での対策努力が一歩一歩と進んでいます。
そこで、私達学習塾事業者が取り組み可能な「人口減や労働力不足問題」への対策といえば、外国人若者たちを我が国に勧誘し、日本文化や言語の効率的な学習機会を提供し、就業機会確保への支援実施ということになるでしょう。
もちろん、少子高齢化や人口減少の大きな問題は、上記のような新しい取り組みが、学習塾自身の側からも必要だということは、言うまでもありません。
学習塾の場合なら、少子化現象はもう一つの無視できない大きな負担をも産み出す原因になるでしょう。
それは、高校や大学への進学競争の難度や激しさの低下を伴い、人口や出産数の多かった時代とは全く異なる、子供や学生たちにとって、密度の高い学習がもはや必要ではない「大いなるゆとり」時代の到来を意味し、学校教育外の家庭学習や補習教育の必要性の激減という現象を産み出す可能性です。
もし、この予測が当たれば、少子化は同時に進学競争の軟化であり、学習塾にとっては二重の大きなハンディになるでしょう。
即ち、少子化は、科学技術の急速な進歩や国際化の進展による国際的な規模での経済社会の競争激化による英語学習の必要性やコンピューター・プログラミング教育の必要性の増大などよりも、はるかに大きな負のインパクトとなって、将来的には、学習塾業界のビジネスに好ましくはない影響をもたらすと考えられます。
もちろん、このように、予測された時代の急変現象を正確に捉え、適切な対策を志向し、よって事業の持続的な成長・発展を企画・推進することは、学習塾事業に携わる者の社会的使命でしょう。
そこで、当塾の場合は、3年前に、幼児や学童を対象にした早期知能開発分野(そろばん・習字・英会話・ロボット科学教育講座)に進出し、その総生徒数が900名を越えた今日では、少子化対策の第2弾として、新たに、人口が引き続き安定的に推移する見込みの強い地球規模での「世界」に迄、顧客対象を広げる究極のマーケッテイング作戦を企画し推進することになるでしょう。
平成30年4月1日 日曜日
岡村ゼミナール・営業本部長:岡村寛三郎
《参考資料》No.1
外国人の介護福祉士養成
ウェルグループ、大阪に実習生向けの塾
2018/3/31 1:31 日本経済新聞 電子版
奈良県を中心に関西で医療・介護事業を展開するウェルグループ(大和郡山市)は4月、外国人技能実習生を対象に介護の技術と知識を教える養成塾を大阪に開く。実習生に国家資格である介護福祉士の受験・合格を目指してもらい、国内で永続的な介護の担い手を増やしたい考えだ。介護業界の人手不足を受け事業者自らが外国人の人材育成に乗り出す。
ウェルグループは約2億5千万円を投入し、大阪市生野区の5階建てオフィスビルを取得、改装する。施設名称は「大阪ウェル・メディカル・ケア・スクール(仮称)」。養成塾としてスタートするが、学校法人の認可を受けて、早ければ2019年度から専門学校として運営したい考えだ。
塾では中国人、ベトナム人などの技能実習生を約100人受け入れる。日本語能力が高ければ留学生の入学も認める。平日は実習生の終業後の夕方以降、土・日曜は昼間に授業を行い、「生活支援技術」や「医療的ケア」などの知識全般と実技演習、日本語を教える。
介護業界の人材不足は深刻だ。厚生労働省は25年に介護人材が約38万人不足すると試算している。政府は昨年11月、技能実習制度の対象職種に介護を加えた。今後、実習生が介護福祉士に合格すれば日本で働き続けられるように制度も見直される見通しだ。ウェルグループはこうした外国人活用の動きに対応する。
《参考資料》No.2
■ドバイ万博控え 日経新聞 4月1日付け朝刊記事
今や世界全体の新規移住者の36%がアジアへ向かい、欧米はそれぞれ2割弱にとどまる。かつて「希望の地」だった米欧で移民への反発が強まるなか、中国をけん引役に高めの経済成長を続けたアジアが大量の移民をのみ込んでいる。
受け入れ国別に2000年以降の新規移住者をみると、東アジアではタイの230万人を筆頭にマレーシアや韓国が続く。タイと韓国は20年前後に15~64歳の生産年齢人口が減少に転じる見通しで、海外からの労働力で人手不足を補っている構図が見てとれる。日本に住む外国人も17年末時点で256万人と、10年前より50万人近く増えた。サービスや建設といった分野を中心に企業などの受け入れはさらに増える見込みだ。
移住者を送り出す側の国もアジアが目立つ。最大は1660万人を送り出しているインドだ。インド人移民のおよそ2割が暮らすのがUAEだ。20年のドバイでの万博開催を控えた建設ラッシュなどをうけて建設労働者らの出稼ぎが急増。今やUAEの人口の3割がインド人労働者だ。
インド以外の輩出国では中国(1000万人)をはじめバングラデシュやシリアが上位を占め、パキスタン、フィリピンも大量の移民を送り出す。輩出側の上位10カ国のうち6カ国はアジア勢だ。中国人の移住先は米国が240万人と最も多く、香港(230万人)、日本(74万人)が続く。日本に住む中国人のうち3人に1人は永住者だ。
「アジアからアジアへ」の移住が大きなうねりになっているのも近年の特徴だ。17年時点で6300万人と、2000年には世界全体の移住者の約5人に1人がアジア域内だったが、17年は「4人に1人」に上昇。一方、アジア出身者のうち欧州への移住比率は24%から19%に下がった。
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「かつては英語圏で所得水準が高い欧州に移る人が多かったが、新興国経済の発展で身近な域内で職を求める動きが広がっている」という。
年齢のデータからもアジアの活力が裏付けられる。若者による域内移動の活発化などで、2000年に37歳だったアジアの移住者の年齢(中央値)は17年に35歳まで下がった。
■排斥政策も影響
これに対し北米は移住者の年齢が38歳から45歳へ一気に跳ね上がった。ラストベルト(さびた工業地帯)の荒廃と白人を中心とする中間層の没落が進む一方、アジアなどからの移住者の所得や社会的地位は上昇が続く。失業率も移住者は米国生まれの人より低い。
「米国第一」を掲げるトランプ米大統領は永住権を抽選で与えるプログラムの廃止などで白人の雇用を守ろうとしており、さらに移民流入が細る可能性がある。欧州も移民の平均年齢が41歳から43歳に上昇した。若年失業率の高止まりなどから海外人材の受け入れの間口を狭めようと世論や政治が動く点は米国と同じだ。
国連の推計では、15年から移住者の流入と流出が同じなら、欧州は10年代後半に人口減少に転じるとはじく。北米も今のペースで移住者が増えれば50年まで人口増が続くが、移住者数が増えなければ40年に人口が減り始める。
潤沢な移民による労働供給を原動力に経済規模の拡大が続くアジア。アジア開発銀行は、中国の安定成長が続けば50年に世界の国内総生産(GDP)のじつに5割をアジアが握り、産業革命以前の1700年代と同じ状況に戻るとされる。米欧が移民への門戸を狭めるほど、「アジアの世紀」の到来は早まる。(川手伊織)
《参考資料》No.3
歴史の転機 人口減少 深刻な危機が国を襲う
毎日新聞2017年1月8日 東京朝刊
日本の人口は「1億人」と思われてきたが、その常識を書き換えなければならない時代がやって来る。
現在の人口は1億2700万人だが、30年後に1億人を割り、100年後には4000万人台になる。江戸時代に近い人口規模だ。
地球にやさしく経済成長を目標としない社会の到来を歓迎する意見もあるが、問題なのは減少のスピードといびつな年齢構成である。100年間で3分の1にまでなる急激なしぼみ方は社会に深刻な影響をもたらすだろう。人口減少をどう考え、どのような対策を講じるべきか、国民全体で考えなければならない。
社会保障に大きな打撃
人口維持のためには出生率2・08以上が必要だ。ところが、この20年間は1・5を上回ったことがない。現役世代の女性はこれからも減っていく。現在の出生率のままだと生まれてくる子供は減り続け、人口減少に歯止めが掛からなくなるのだ。
地方では限界集落が増えていき、自治体の機能が維持できなくなることが予想される。すでに水道など生活基盤を維持するコストの地域間格差は大きく広がっている。
特に問題なのは現役世代の労働人口の減少だ。人工知能(AI)やロボットで代替できない人的サービスの労働力不足は深刻になる。海外からの労働力に頼ることを真剣に考えなければならなくなるが、急激な移民の増加が国内にさまざまな社会問題をもたらす懸念もある。
もっとも打撃を受けるのは社会保障制度だ。
戦後間もないころは農業や自営業を家族で営み、多世代同居の暮らし方をする人が大半を占めていた。老後の経済的保障である年金をあまり必要とせず、介護も子育ても家族内で賄うことができた。
ところが、今は雇用労働が全体の9割を占めるまでになり、核家族や1人暮らしが多数派になった。税や保険料を納める現役世代が減ると、年金や介護などの財源が確保できず、社会保障制度は維持できなくなる。自分で生活を守る経済力がない人や家族のいない人は生きること自体が難しくなるのだ。
一つの国の急激な人口増減は国家間のパワーバランスを崩すことにもなる。明治以降、日本は急激に人口が増加し、太平洋戦争直前までの60年間で人口は2倍になった。国内だけでは養うことができず、この時期の海外への移民は80万人近くに上った。満州事変の遠因にもなったとも指摘される。
逆に、これからの急激な人口減少で東アジアに「空白」が生まれると経済や安全保障にさまざまな影響が出ることが懸念される。
これまで人口減少が重要な政治課題にならなかったのは、国民がすぐに何か困ったことが起きているようには実感できないからでもある。都市部の過密な通勤電車や集合住宅で生活している人は、むしろ過密な人口に弊害を感じたりするだろう。
結婚や出産は個人の問題と考え、国家が介入することを嫌悪したり違和感をおぼえたりする人が多いことも挙げられる。戦前の富国強兵策の下での「産めよ、増やせよ」が国民の深層心理にトラウマを残しているのかもしれない。
家族の負担を減らそう
先進国の中で少子化対策に成功した国としてはフランスやスウェーデンが知られている。
20世紀になって人口減少が顕在化したスウェーデンでは、当初は楽観的に受け止められていたという。だが、長期的には社会全体に大きな危機をもたらすものとして、戦後の社会民主労働党政権の下で少子化対策を重視する政策へと転換した。
富国強兵のために出産を奨励するのではなく、結婚して子供をもうけるのに支障となっている要因を取り除くことに政府の役割を見いだしたのである。出産や子育てにかかる経済的支援、女性が出産後も働き続けられるような保育所の拡充、教育費の負担軽減などの政策だ。
日本でも高度成長期に年金制度が整備され、高齢者の支援を家族だけに任せるのではなく、社会全体で支える仕組みへと転換が図られてきた。一方で子育ては相変わらず家族に担わせてきたことが少子化を招く大きな要因となった。
賃金が低く不安定な非正規雇用の若者の未婚率は著しく高い。子供を産まない理由として経済的に苦しいことを挙げる人も多い。
フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏は毎日新聞のインタビューで日本の人口減少にこう警鐘を鳴らしている。
「日本が直面している最大の課題は人口の減少と老化だ。意識革命をして出生率を高めないと30~40年後に突然災いがやってくる」
私たちが気づかないうちに、人口減少は社会の土台を崩していく。今こそ未来志向の政策を大胆に実施し、急激な人口減少から日本を救わなければならない。
以上
極めて重要な課題
⇒ マーケッテイング・エリアを世界に拡大する必要性
皆様のご清栄をお慶び致します。
さて、最近の新聞を読んでいますと、日本国内の人口や労働力の減少、そしてそれを補うアジア各国からの若者たちの流入の増大などが、頻繁に話題になっています。
建設業やサービス業、農業・製造業分野等を含め、取り分け、介護福祉事業分野での労働力不足は深刻な状況で、官民一体での対策努力が一歩一歩と進んでいます。
そこで、私達学習塾事業者が取り組み可能な「人口減や労働力不足問題」への対策といえば、外国人若者たちを我が国に勧誘し、日本文化や言語の効率的な学習機会を提供し、就業機会確保への支援実施ということになるでしょう。
もちろん、少子高齢化や人口減少の大きな問題は、上記のような新しい取り組みが、学習塾自身の側からも必要だということは、言うまでもありません。
学習塾の場合なら、少子化現象はもう一つの無視できない大きな負担をも産み出す原因になるでしょう。
それは、高校や大学への進学競争の難度や激しさの低下を伴い、人口や出産数の多かった時代とは全く異なる、子供や学生たちにとって、密度の高い学習がもはや必要ではない「大いなるゆとり」時代の到来を意味し、学校教育外の家庭学習や補習教育の必要性の激減という現象を産み出す可能性です。
もし、この予測が当たれば、少子化は同時に進学競争の軟化であり、学習塾にとっては二重の大きなハンディになるでしょう。
即ち、少子化は、科学技術の急速な進歩や国際化の進展による国際的な規模での経済社会の競争激化による英語学習の必要性やコンピューター・プログラミング教育の必要性の増大などよりも、はるかに大きな負のインパクトとなって、将来的には、学習塾業界のビジネスに好ましくはない影響をもたらすと考えられます。
もちろん、このように、予測された時代の急変現象を正確に捉え、適切な対策を志向し、よって事業の持続的な成長・発展を企画・推進することは、学習塾事業に携わる者の社会的使命でしょう。
そこで、当塾の場合は、3年前に、幼児や学童を対象にした早期知能開発分野(そろばん・習字・英会話・ロボット科学教育講座)に進出し、その総生徒数が900名を越えた今日では、少子化対策の第2弾として、新たに、人口が引き続き安定的に推移する見込みの強い地球規模での「世界」に迄、顧客対象を広げる究極のマーケッテイング作戦を企画し推進することになるでしょう。
平成30年4月1日 日曜日
岡村ゼミナール・営業本部長:岡村寛三郎
《参考資料》No.1
外国人の介護福祉士養成
ウェルグループ、大阪に実習生向けの塾
2018/3/31 1:31 日本経済新聞 電子版
奈良県を中心に関西で医療・介護事業を展開するウェルグループ(大和郡山市)は4月、外国人技能実習生を対象に介護の技術と知識を教える養成塾を大阪に開く。実習生に国家資格である介護福祉士の受験・合格を目指してもらい、国内で永続的な介護の担い手を増やしたい考えだ。介護業界の人手不足を受け事業者自らが外国人の人材育成に乗り出す。
ウェルグループは約2億5千万円を投入し、大阪市生野区の5階建てオフィスビルを取得、改装する。施設名称は「大阪ウェル・メディカル・ケア・スクール(仮称)」。養成塾としてスタートするが、学校法人の認可を受けて、早ければ2019年度から専門学校として運営したい考えだ。
塾では中国人、ベトナム人などの技能実習生を約100人受け入れる。日本語能力が高ければ留学生の入学も認める。平日は実習生の終業後の夕方以降、土・日曜は昼間に授業を行い、「生活支援技術」や「医療的ケア」などの知識全般と実技演習、日本語を教える。
介護業界の人材不足は深刻だ。厚生労働省は25年に介護人材が約38万人不足すると試算している。政府は昨年11月、技能実習制度の対象職種に介護を加えた。今後、実習生が介護福祉士に合格すれば日本で働き続けられるように制度も見直される見通しだ。ウェルグループはこうした外国人活用の動きに対応する。
《参考資料》No.2
■ドバイ万博控え 日経新聞 4月1日付け朝刊記事
今や世界全体の新規移住者の36%がアジアへ向かい、欧米はそれぞれ2割弱にとどまる。かつて「希望の地」だった米欧で移民への反発が強まるなか、中国をけん引役に高めの経済成長を続けたアジアが大量の移民をのみ込んでいる。
受け入れ国別に2000年以降の新規移住者をみると、東アジアではタイの230万人を筆頭にマレーシアや韓国が続く。タイと韓国は20年前後に15~64歳の生産年齢人口が減少に転じる見通しで、海外からの労働力で人手不足を補っている構図が見てとれる。日本に住む外国人も17年末時点で256万人と、10年前より50万人近く増えた。サービスや建設といった分野を中心に企業などの受け入れはさらに増える見込みだ。
移住者を送り出す側の国もアジアが目立つ。最大は1660万人を送り出しているインドだ。インド人移民のおよそ2割が暮らすのがUAEだ。20年のドバイでの万博開催を控えた建設ラッシュなどをうけて建設労働者らの出稼ぎが急増。今やUAEの人口の3割がインド人労働者だ。
インド以外の輩出国では中国(1000万人)をはじめバングラデシュやシリアが上位を占め、パキスタン、フィリピンも大量の移民を送り出す。輩出側の上位10カ国のうち6カ国はアジア勢だ。中国人の移住先は米国が240万人と最も多く、香港(230万人)、日本(74万人)が続く。日本に住む中国人のうち3人に1人は永住者だ。
「アジアからアジアへ」の移住が大きなうねりになっているのも近年の特徴だ。17年時点で6300万人と、2000年には世界全体の移住者の約5人に1人がアジア域内だったが、17年は「4人に1人」に上昇。一方、アジア出身者のうち欧州への移住比率は24%から19%に下がった。
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「かつては英語圏で所得水準が高い欧州に移る人が多かったが、新興国経済の発展で身近な域内で職を求める動きが広がっている」という。
年齢のデータからもアジアの活力が裏付けられる。若者による域内移動の活発化などで、2000年に37歳だったアジアの移住者の年齢(中央値)は17年に35歳まで下がった。
■排斥政策も影響
これに対し北米は移住者の年齢が38歳から45歳へ一気に跳ね上がった。ラストベルト(さびた工業地帯)の荒廃と白人を中心とする中間層の没落が進む一方、アジアなどからの移住者の所得や社会的地位は上昇が続く。失業率も移住者は米国生まれの人より低い。
「米国第一」を掲げるトランプ米大統領は永住権を抽選で与えるプログラムの廃止などで白人の雇用を守ろうとしており、さらに移民流入が細る可能性がある。欧州も移民の平均年齢が41歳から43歳に上昇した。若年失業率の高止まりなどから海外人材の受け入れの間口を狭めようと世論や政治が動く点は米国と同じだ。
国連の推計では、15年から移住者の流入と流出が同じなら、欧州は10年代後半に人口減少に転じるとはじく。北米も今のペースで移住者が増えれば50年まで人口増が続くが、移住者数が増えなければ40年に人口が減り始める。
潤沢な移民による労働供給を原動力に経済規模の拡大が続くアジア。アジア開発銀行は、中国の安定成長が続けば50年に世界の国内総生産(GDP)のじつに5割をアジアが握り、産業革命以前の1700年代と同じ状況に戻るとされる。米欧が移民への門戸を狭めるほど、「アジアの世紀」の到来は早まる。(川手伊織)
《参考資料》No.3
歴史の転機 人口減少 深刻な危機が国を襲う
毎日新聞2017年1月8日 東京朝刊
日本の人口は「1億人」と思われてきたが、その常識を書き換えなければならない時代がやって来る。
現在の人口は1億2700万人だが、30年後に1億人を割り、100年後には4000万人台になる。江戸時代に近い人口規模だ。
地球にやさしく経済成長を目標としない社会の到来を歓迎する意見もあるが、問題なのは減少のスピードといびつな年齢構成である。100年間で3分の1にまでなる急激なしぼみ方は社会に深刻な影響をもたらすだろう。人口減少をどう考え、どのような対策を講じるべきか、国民全体で考えなければならない。
社会保障に大きな打撃
人口維持のためには出生率2・08以上が必要だ。ところが、この20年間は1・5を上回ったことがない。現役世代の女性はこれからも減っていく。現在の出生率のままだと生まれてくる子供は減り続け、人口減少に歯止めが掛からなくなるのだ。
地方では限界集落が増えていき、自治体の機能が維持できなくなることが予想される。すでに水道など生活基盤を維持するコストの地域間格差は大きく広がっている。
特に問題なのは現役世代の労働人口の減少だ。人工知能(AI)やロボットで代替できない人的サービスの労働力不足は深刻になる。海外からの労働力に頼ることを真剣に考えなければならなくなるが、急激な移民の増加が国内にさまざまな社会問題をもたらす懸念もある。
もっとも打撃を受けるのは社会保障制度だ。
戦後間もないころは農業や自営業を家族で営み、多世代同居の暮らし方をする人が大半を占めていた。老後の経済的保障である年金をあまり必要とせず、介護も子育ても家族内で賄うことができた。
ところが、今は雇用労働が全体の9割を占めるまでになり、核家族や1人暮らしが多数派になった。税や保険料を納める現役世代が減ると、年金や介護などの財源が確保できず、社会保障制度は維持できなくなる。自分で生活を守る経済力がない人や家族のいない人は生きること自体が難しくなるのだ。
一つの国の急激な人口増減は国家間のパワーバランスを崩すことにもなる。明治以降、日本は急激に人口が増加し、太平洋戦争直前までの60年間で人口は2倍になった。国内だけでは養うことができず、この時期の海外への移民は80万人近くに上った。満州事変の遠因にもなったとも指摘される。
逆に、これからの急激な人口減少で東アジアに「空白」が生まれると経済や安全保障にさまざまな影響が出ることが懸念される。
これまで人口減少が重要な政治課題にならなかったのは、国民がすぐに何か困ったことが起きているようには実感できないからでもある。都市部の過密な通勤電車や集合住宅で生活している人は、むしろ過密な人口に弊害を感じたりするだろう。
結婚や出産は個人の問題と考え、国家が介入することを嫌悪したり違和感をおぼえたりする人が多いことも挙げられる。戦前の富国強兵策の下での「産めよ、増やせよ」が国民の深層心理にトラウマを残しているのかもしれない。
家族の負担を減らそう
先進国の中で少子化対策に成功した国としてはフランスやスウェーデンが知られている。
20世紀になって人口減少が顕在化したスウェーデンでは、当初は楽観的に受け止められていたという。だが、長期的には社会全体に大きな危機をもたらすものとして、戦後の社会民主労働党政権の下で少子化対策を重視する政策へと転換した。
富国強兵のために出産を奨励するのではなく、結婚して子供をもうけるのに支障となっている要因を取り除くことに政府の役割を見いだしたのである。出産や子育てにかかる経済的支援、女性が出産後も働き続けられるような保育所の拡充、教育費の負担軽減などの政策だ。
日本でも高度成長期に年金制度が整備され、高齢者の支援を家族だけに任せるのではなく、社会全体で支える仕組みへと転換が図られてきた。一方で子育ては相変わらず家族に担わせてきたことが少子化を招く大きな要因となった。
賃金が低く不安定な非正規雇用の若者の未婚率は著しく高い。子供を産まない理由として経済的に苦しいことを挙げる人も多い。
フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏は毎日新聞のインタビューで日本の人口減少にこう警鐘を鳴らしている。
「日本が直面している最大の課題は人口の減少と老化だ。意識革命をして出生率を高めないと30~40年後に突然災いがやってくる」
私たちが気づかないうちに、人口減少は社会の土台を崩していく。今こそ未来志向の政策を大胆に実施し、急激な人口減少から日本を救わなければならない。
以上