美術市場最大のミステリー、ダヴィンチ幻の名画は果たして本物か? 「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」を鑑賞してきました。
今回の映画は、2017年にクリスティーズのオークションで史上最高額508億円で落札されたダヴィンチ作と言われるサルバトール・ムンディについてのドキュメンタリー映画です。美術ファンの間ではダヴィンチ幻の名画として知られていますが、この作品に対しての真贋が定かではなく、現在ではダヴィンチ工房作が有力とされています。
その根拠とな事実の経過を克明に追っているのですが、実に美術界の闇が描かれていて美術に携わる僕としても、実におもしろい内容でした。ダヴィンチを代表する当時の有名画家たちは自らの工房で弟子たちとの共同作業で行われていて、ダヴィンチ自らの手を加えたと思われる作品に限りダヴィンチ作としています。
まあ、そのことも権威ある研究者(鑑定家)のお墨付きによるものです。今回のサルバトール・ムンディも、ここからが発端であると思います。
経過を追うと
1958年に複製とされた文献でしか存在しない「サルバトール・ムンディ」をある画商が2005年に1万ドルで入手し修復の後に真筆が証明
2011年ロンドンのナショナルギャラリーで展示され初のお披露目
2015年サザビーズのオークションでスイズ人が画商が90億円で落札し、ロシア人富豪に140億円で売却
2017年クリスティーズのオークションで史上最高額に508億円で落札
2019年ルーブル美術館でのダヴィンチ没後500年大回顧展に出品予定が出品されず。
2021年サウジアラビアの王子が所有者であることが発覚、クリスティーズオークションでのお披露目以降一度も一般公開されず。
と言うことです。
かいつまんだ経過では、何が面白いかと思われる方も多いかと思いますが、まず、一攫千金の賭けにでた画商、野心家の学芸員、戦術家のオークション会社など海千山千の者たちの暗躍が垣間見えるとこです。
特にクリスティーズが古典絵画部門ではなく、現代美術部門でオークションにかけた下りは、今の現代アートブームを皮肉っているようでした。
ともあれ、絵画は時に投資の一部とされるのはいつの時代も変わりませんが、本来の美術愛好家や美術関係者とは程遠い欲にまみれた人々の存在により世間の話題になるのは事実です。作品には決して罪はないのであしからず。