今月末は、映画の話題はそして父になるが独占するかと思います。その時期に先行して上映されているのが、リリー・フランキーとピエール瀧が凶悪犯を演じて、静かな話題を呼びそうなのが映画「凶悪」だと思います。僕も興味があるのでさっそく鑑賞してきました。
この映画、新潮45編集部のノンフィクションべストセラーがベースとなっています。ピエール瀧演じる死刑囚須藤の余罪告白により、先生と呼ばれるリリー・フランキー演じる共謀犯、木村の完全犯罪を、山田孝之演じるジャーナリスト藤井が暴き出す内容です。
観賞前に、テレビで特集された内容を視聴していたので、詳細な内容はわかっていたのですが、ピエール瀧とリリー・フランキーの鬼気迫る殺害シーンが強烈で、ピエールの傍若無人ぶりとリリーの異様な冷酷ぶりに圧倒されました。憑りつかれるように事件を追う山田の演技も、正義の名のもとに狂気をましていきます。
この作品は、原作とは違う、ノンフィクションをベースにした、人間の持つ凶悪な心理を描いたフィクションとして見ごたえのある作品で、故若松孝二監督に支持する白石和彌監督の強い遺志を感じます。
その遺志は、殺害後に罪悪感に苛まれる須藤、殺人をゲームのように楽しむ木村、正義をかさに憎悪の刃を向け続ける藤井、三者三様の姿が凶悪と言う言葉に集約されているように思いました。