海外で評価の高い日本人は、数多いが、こと美術の世界に目を向けると極めてその数は少ないです。近年、村上隆や草間弥生など現代美術の世界で国際的に評価の高いアーティストはいても、今回の奈良美智のような洋画家としての国際的な評価が高いアーチストは少ないです。また、彼の場合、同時進行的に内外で評価を高めてきたことも特筆すべき点ではないかと思います。
現在9月24日まで豊田市美術館で開催中の奈良美智展は、彼のドローイング作品にスポットをあてた点で注目すべき展覧会だと思います。また、彼の作品を代表する少女たちは、、ほぼ同じ目線で配置され鑑賞のポイントとなっています。
奈良は、青森県出身ですが、学生時代やドイツでの留学まで出身大学の愛知県立芸術大学の長久手周辺で制作活動を行ってきました。会場に入ると彼の制作のルーツとも言える古い人形や書籍、LP盤のレコードジャケットが展示されています。それらの作品を目にとめて会場を進んでいくと彼がいかに、それらの品々からインスピレ―ションが導き出されていたかが伺えます。
個人的には、大音量でハードロックなどの音楽を聴きながら制作活動のなかで生まれた200年前後のパンキッシュな少女像が好きですが、どこか不器用で素朴な彼の内面が作品に感じられます。そして、異なる表情を持つ少女に宿るクールな瞳の奥には、誰もが持ちうる純朴な思いが投影され、奈良美智のダイレクトなメッセージが静かな叫ぶを伴って観るものを魅了するのだと思います。