映画と共に僕の日常となっているアート鑑賞、今回は名古屋市美術館で開催中の「ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」をアートレビューします。
4月10日まで開催中の本展、日本でも人気の高い画家の展覧会とあって当日券を買うのにも困難な状況で僕も、アート好き仲間と一緒に予約して鑑賞しました。
今回の美術展は、世界一のゴッホ収集家である創立者故ヘレーネ・クレラー=ミュラー夫人によりクレラー=ミュラー美術館の所蔵品による展覧会です。クレラー=ミュラー氏はまださほどゴッホの評価が高くない頃から美術収集を始めた方で、もっともゴッホ愛が高く、夫人なくして今日のゴッホは語れない方です。
その収集は、初期のデッサン画や油彩、パリやアルルでの画家生活に晩年のサンレミ療養院時代とゴッホの生涯を追うように収集され、またゴッホが影響を受けたミレーやピサロ、ルドンなどの作品やアンソールやブラック、モンドリアンなど彼女が愛した画家の作品も加えて展示されています。特に注目は象徴主義の巨匠ルドンの代表作「キュクロプス」が今回出品されています。
特筆すべきは、ゴッホのデッサン画の数々、独学で画家の道を目指したゴッホですが、初期のデッサン画から次第にデッサン力を高めていく過程が作品から感じ取れます。また、オランダ時代の油彩画にはバルビゾン派の写実的な要素が強く初公開となる「森のはずれ」にはその特徴が色濃く残っていました。まさにゴッホの基礎はここから育まれたと言えます。
印象派から始まり、新印象派やジャポネスクなど様々な画家の影響を受けたゴッホ、独特な色彩感覚の中に新印象派の点描画の特色あり、ゴッホの手にかかると大胆で力強く、そして色鮮やかに表現され影響を受けながらもゴッホでしか描けない世界が広がっていました。
名古屋市美術館では、過去に度々ゴッホ展が開かれていますが、今回の展覧会は美術館の歴史の中で類を見ないものでしょう。それだけに、展示空間が狭い本館にはハンデがあります。また、臨時動員されたスタッフの対応にもいささか問題があると感じました。僕自身、東京展開催の東京都美術館を知っているだけに、少しここでは魅力に欠けると考えます。炎の画家ゴッホと彼に情熱をかけたヘレーネ=ミュラー夫人には物足りないかもしれません。
ともあれ、4月10日の最終日で最後の巡回展となる名古屋展、ゴッホとヘレーネの響きあう魂の世界をぜひ目撃してみてください。