ブルース・スプリングスティーンの出会いで人生が開けたパキスタン青年の青春ダイアリーを描いた映画「カセットテープ・ダイアリーズ」を観てきました。
舞台は、1980年代後半のイギリス田舎町。パキスタン移民の高校生ジャベドは、人種差別と保守的で厳格な父の押し付けに鬱屈した思いを日記に書き留めている。ある日、友人からブルース・スプリングスティーンのカセットテープを渡されたことでブルースの音楽を知り、人生が少しづつ変わっていくという実在の人物で脚本、原作のサルフラズ・マンズールがモデル、監督は、ベッカムに恋してのグリンダ・チャーダです。
当時のイギリスは鉄の女として有名なサッチャー政権下で、失業率が上昇し、労働組合などのストライキは減ったもののネオナチなどの人種差別主義者のデモが行わるなど社会が混乱を極めた時代。一方で、音楽シーンでは、ニューウエーヴといわれるUKロックが世界的にヒット、主人公が聴いていたバンドもペットショップボーイズでした。
そんな時代に、アメリカでボスといわれたブルース・スプリングティーンのアルバム「ボーン・イン・ザ・USA」がヒット。再び脚光を浴びます。僕も当時、このアルバムを聴きまくってました。
主人公のジャベドの置かれた環境を思うと、当時の音楽とは異なるエネルギッシュで名もなき庶民の思いを代弁する彼の歌声と詞は衝撃的だったと思います。そして、彼が人生をサポートしてくれた友人や教師の存在もきちんと描かれているのも共感がもてました。
コロナ禍で世界的に様々な社会問題が噴出している現在、この作品は今の社会の風潮に一石を投じる説得力を決して重苦しさもなく、ブルースの世界を通じてリズミカルに表現してくれてるのも、とても素敵な映画です。