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65オヤジのスタイルブック

月映展・愛知県美術館

平成に入り若い世代に昭和懐古的傾向が強い昨今ですが、ものや風俗が昭和に向けられている中で、文学や芸術においては更に先の明治、大正の近代が注目されているように感じます。

それは、彼らにとっては、復古主義や懐古主義ではなく、その時代の文学や芸術が新しいものに感じ取られているように思うのです。

愛知県美術館で開催中の「月映展・つくばえてん」は、そうした若者たちに、足を運んでもらえたら新しい発見があると思います。

今から100年も前に、田中泰吉、藤森静雄、恩地孝四郎の20代半ばの三人の若者により企画された木版画集「月映」が出版されます。若い無名の画家の出版を引き受けたのは「夢二画集」や「白樺」の版元であった洛陽堂で、恩地に影響を与えた竹久夢二の尽力があったようです。

制作中から病を患っていた田中泰吉は後に23歳で息を引き取るのですが、その作品に感銘を受けた詩人の萩原朔太郎の「月に吠える」で挿絵を担当しています。

今回の展覧会は、初期の回覧雑誌の作品から、月映、その後の作品で構成され、自らが版木を彫り摺る自刻木版による作品は、どの作品もモダンで、古さを感じさせない斬新なものでした。そして若い画家たちの革新的な発想が感じられます。また、若くしてこの世を去った田中泰吉の作品には早逝の画家に感じる儚さが漂いながらも、病に伏せながら輝く綺羅星を感じました。

ぜひ若者たちの挑んだ新しい企てを、ぜひ会場で味わってみてください。


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