本日の映画鑑賞紹介は、TBSテレビの秘蔵映像を元に作られたドキュメンタリー作品「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」です。
日本のクーデター事件と言えば、先ず2・26事件と5・15事件を思い浮かべるでしょう。そして、1970年11月25日の三島由紀夫率いる盾の会による三島事件でしょう。三島事件は、自衛隊市ヶ谷駐屯地に立てこもり、自衛隊員に決起を呼びかけるも果たせず自決し、生涯を閉じるという壮絶なものでした。
今回の映画は、三島事件の1年半前1969年5月13日、全共闘を中心に吹き荒れる学生運動の最中に、敵対関係にあった東大全共闘討論会の模様を収めたTBSだけに唯一残る80分の秘蔵映像を元に、当時の全共闘主催者や盾の会メンバーなどの証言や文学者や哲学者などの研究者などによる分析を交えたドキュメンタリーです。
単身、敵のアジトに乗り込んだ三島が、自らの知識を駆使して1000人の全共闘を相手に言葉を武器に闘う三島と主催者メンバーたちは、真っ向から三島の主張を切り捨てる。まさに相いれない結論なきものですが、三島のスタンスが実におもしろいです。自らの主張を述べながらも、学生たちの熱情を信じ、己の側へ向かい入れようとする姿勢がありありと見えその姿に惹きつけられます。
僕にとって、三島の思想も全共闘世代の思想も相いれないものがありますが、両者のその後の生き方は正反対の者でした。権力の刃に敗れ、死を選んだ三島に対して、全共闘世代に人々は、今回の対論の中心的な存在だった芥氏を除けば、自らが否定した社会構造の中に組み込まれ、手足をもがれた形になったと思っています。ただし、今回の主催者に関しては、今もその思想を胸に秘めたものは感じました。
そして、討論会を突き詰めれば理論武装された人間が相手に対して戦いを挑み相手の心を揺るがすものは、やはり熱情による言霊だと強く思いました。