中国に進出している外資系企業が今、消費者による抗議パフォーマンスの恐怖にさらされている。
『新華社』(6月8日付)によると、山東省青島市内のピザハットの店舗前で、2人組の視覚障害者が抗議を行った。彼らは、同社CMのダジャレ(中国語で発音が同じ「エビ」と「盲目」をかけた)が、視覚障害者を馬鹿にしていると主張。抗議活動はその後、北京市などにも飛び火した。また、青島市では5月、国際自動車ショーの会場前で、ある男性が自ら所有する約4000万円の高級イタリア車マセラティをハンマーで破壊。代理店による不誠実な対応への抗議だという。同市では2年前にも、ランボルギーニを破壊する同様の抗議が行われている。
しかし、いくら大富豪とて、抗議のために数千万円の高級車を壊してしまうのは不自然な話だ。日本車メーカーの駐在員・内田義隆さん(仮名・43歳)によると、こうしたパフォーマンスは、ライバル企業による自作自演だという。
「外国車のイメージを貶めたい国内メーカーによる策略ですよ。故障したBMWを市街地で馬に引かせたり、事故で大破した日本車の写真をネットに流したりなどを盛んにやっている」
一方、中国版ツイッター「微博」では6月4日、「ペプシコーラに金魚の死体が混入していた」という書き込みが写真付きで投稿され、話題となった。だが、写真に撮された金魚があまりにも大きいなど不自然な点も多く、投稿主による自作自演説が有力だ。
広州市で日本料理店を経営する松田尚さん(仮名・42歳)は、ある防衛策をとっているという。
「中国では『料理から異物が出てきた』とでっちあげられることは、珍しい話ではない。尖閣問題以降、反日感情の高まりもあり、自作自演だったとしてもネットで拡散してしまう。うちでは最近、万が一のときに反論できるよう、調理の過程をカメラで録画しています」
しかし、確たる証拠もないにもかかわらず、こうしたパフォーマンスは、一部で支持されている。その背景について大手ポータルサイト『新浪』の東京特派員・蔡成平氏はこう解説する。
「中国人は『外資系企業に軽んじられている』という被害者意識がある。事実関係が確認できなくても、外資系企業を非難すれば、賛同するものが次から次へと現れる。4月に政府系メディアが、『中国の消費者に差別的なサービスをしている』としてアップル社を槍玉にあげると、“炎上”して同社が謝罪に追い込まれたことも好例」
外資系バッシングの最悪の事態となったのが昨年の反日デモだ。湖南省長沙市の日系デパート・平和堂が暴徒に襲撃されたことも記憶に新しいが、その背後にもライバル企業の影があった。中国駐在の同社の取引関係者はこう明かす。
「’10年、平和堂1号店の目の前に、地下鉄が交差するターミナル駅が建設されることが決まった。完成すれば、まさに一等地中の一等地。以降、平和堂は地元政府による圧力をかけられていた。背後にいるのは好立地を狙う地元ディベロッパーです。反日デモによる襲撃も、『店を潰せばこの街から出ていく』と彼らが仕掛けたと思う」
雇用を生む外資系企業の撤退が、自分たちの首を絞めていることをわかっているのだろうか。
【プロクレーマーが英雄に!?】
中国に“伝説のプロ抗議パフォーマー”と呼ばれる人物がいる。山東省青島市出身の王海さんだ。彼は’95年、中国の消費者保護法に「詐欺行為があった場合、消費者は支払額の2倍の賠償金を要求できる」という文言を発見。そこで、コピー商品や模倣品や誇張表現の電化製品、無許可営業の有料トイレにまで、かたっぱしから消費者としてイチャモンをつけ、次々と賠償金を手に入れたのだ。全国で王海さんに続く人々が次々と出現し、中国企業は消費者権利について再考を余儀なくされた。そんな功績(?)から、’98年には訪中したクリントン米大統領(当時)との会談も実現した。strong>
『新華社』(6月8日付)によると、山東省青島市内のピザハットの店舗前で、2人組の視覚障害者が抗議を行った。彼らは、同社CMのダジャレ(中国語で発音が同じ「エビ」と「盲目」をかけた)が、視覚障害者を馬鹿にしていると主張。抗議活動はその後、北京市などにも飛び火した。また、青島市では5月、国際自動車ショーの会場前で、ある男性が自ら所有する約4000万円の高級イタリア車マセラティをハンマーで破壊。代理店による不誠実な対応への抗議だという。同市では2年前にも、ランボルギーニを破壊する同様の抗議が行われている。
しかし、いくら大富豪とて、抗議のために数千万円の高級車を壊してしまうのは不自然な話だ。日本車メーカーの駐在員・内田義隆さん(仮名・43歳)によると、こうしたパフォーマンスは、ライバル企業による自作自演だという。
「外国車のイメージを貶めたい国内メーカーによる策略ですよ。故障したBMWを市街地で馬に引かせたり、事故で大破した日本車の写真をネットに流したりなどを盛んにやっている」
一方、中国版ツイッター「微博」では6月4日、「ペプシコーラに金魚の死体が混入していた」という書き込みが写真付きで投稿され、話題となった。だが、写真に撮された金魚があまりにも大きいなど不自然な点も多く、投稿主による自作自演説が有力だ。
広州市で日本料理店を経営する松田尚さん(仮名・42歳)は、ある防衛策をとっているという。
「中国では『料理から異物が出てきた』とでっちあげられることは、珍しい話ではない。尖閣問題以降、反日感情の高まりもあり、自作自演だったとしてもネットで拡散してしまう。うちでは最近、万が一のときに反論できるよう、調理の過程をカメラで録画しています」
しかし、確たる証拠もないにもかかわらず、こうしたパフォーマンスは、一部で支持されている。その背景について大手ポータルサイト『新浪』の東京特派員・蔡成平氏はこう解説する。
「中国人は『外資系企業に軽んじられている』という被害者意識がある。事実関係が確認できなくても、外資系企業を非難すれば、賛同するものが次から次へと現れる。4月に政府系メディアが、『中国の消費者に差別的なサービスをしている』としてアップル社を槍玉にあげると、“炎上”して同社が謝罪に追い込まれたことも好例」
外資系バッシングの最悪の事態となったのが昨年の反日デモだ。湖南省長沙市の日系デパート・平和堂が暴徒に襲撃されたことも記憶に新しいが、その背後にもライバル企業の影があった。中国駐在の同社の取引関係者はこう明かす。
「’10年、平和堂1号店の目の前に、地下鉄が交差するターミナル駅が建設されることが決まった。完成すれば、まさに一等地中の一等地。以降、平和堂は地元政府による圧力をかけられていた。背後にいるのは好立地を狙う地元ディベロッパーです。反日デモによる襲撃も、『店を潰せばこの街から出ていく』と彼らが仕掛けたと思う」
雇用を生む外資系企業の撤退が、自分たちの首を絞めていることをわかっているのだろうか。
【プロクレーマーが英雄に!?】
中国に“伝説のプロ抗議パフォーマー”と呼ばれる人物がいる。山東省青島市出身の王海さんだ。彼は’95年、中国の消費者保護法に「詐欺行為があった場合、消費者は支払額の2倍の賠償金を要求できる」という文言を発見。そこで、コピー商品や模倣品や誇張表現の電化製品、無許可営業の有料トイレにまで、かたっぱしから消費者としてイチャモンをつけ、次々と賠償金を手に入れたのだ。全国で王海さんに続く人々が次々と出現し、中国企業は消費者権利について再考を余儀なくされた。そんな功績(?)から、’98年には訪中したクリントン米大統領(当時)との会談も実現した。strong>