能楽ブロガーたちの記録ーようこそ会津能楽会へー

おもに年3回の会津能楽会公演を報告します。その外は能楽や会津の自然、郷土食、生活文化について、4名が綴る共同ブログです。

第28回会津鶴ヶ城薪能

2014-10-05 14:49:56 | 

「会津まつり」は秋の彼岸中に行われ、9月23日の「歴代藩侯武者行列」は、会津観光の目玉イベントとなっている。会津の人たちにとって、祭りではあるが敗れた戊辰戦争を思い出し弔う、悲しい日でもある。能楽には戦いに敗れた武将が現れ、ありし日のことを語り、回向を頼み消え去る演目もあるから、その思いが重なる人もあるだろう。
 毎年、9月23日の夕方からは会津能楽会の薪能が行われ、観客動員数は例年300から400名位と少ないが、全国各地からの客もある。
薪能が始まる前の会長挨拶、市長挨拶、仕舞(画像クリックで拡大)


今年の演目は「須磨源氏」だ。前シテとして稽古を積んできたが、いざ装束を着け鏡の間に入ったら、先輩から「役になりきって集中しなさい」といわれ、雑念を払い集中しようとするとたら、覚えたはずのことばや謡が思い出せない。これはまずい。すでにワキとワキヅレは舞台に出て演技をしている。「何とかなる」と思い直し、幕開けの人と一言、二言、話したら楽になった。2度目の笛が鳴り幕が上がってしまった。あれっと思っても出るしかない。何とかなったのだろうか?

以下、能の流れに従って、説明を加えます。

囃子方、地謡方が舞台に入り、立ち方の舞台入りを待つ、笛方の鋭い響きが合図となり、ワキ、ワキヅレが舞台に入り謡
をする。前シテも入る(右下)

前シテ(光源氏の化身である老人)はワキとの問答、光源氏の故事を語り「今は亡き光源氏は今は天に住んでいるが、
月光によって下界に下りてくる」と、天を仰ぎ、さらに下を見下ろす所作。「月の夜を待ちなさいと」言い残して、
光源氏であることをほのめかして雲隠れに消えうせる。
 
中入り
能では前シテも後シテも同じ人物が演ずるが、着替えの時間を稼ぐため、中入れで間狂言がある。
本会では狂言をやらないので、前シテと後シテを区別しては配役している。
後シテの装束はは光源氏の生きている時の姿(公達)である。地謡や自分で謡う場面の所作にはわかり易い所作もあるが、
囃子方のリズムだけによる舞は、特別に意味をもったものではなく、全体としてシテの感情の盛り上がりを舞で表している。
舞う人の表現力がどれだけ観客伝わるかが演者の力量となり、観客もまた観賞力が問われることともなるのが能の特徴でもある。(ksk)