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横浜市港南区で10月、市営バスの運転手と営業所の職員が「連係プレー」

2023-12-30 18:00:35 | ニュース
横浜市交通局の尾西政弘さん(左)、八木建二さん(右)をねぎらう港南署の村野英明署長=横浜市港南区の同署で2023年11月29日午後1時33分、柿崎誠撮影© 毎日新聞 提供

 横浜市港南区で10月、市営バスの運転手と営業所の職員が「連係プレー」で、行方不明になった認知症の高齢女性を見つけ出す出来事があった。行方が分からなくなって約10時間後という早期の発見を可能にしたのは、運転手らの機転に加え、自治体が進めている、ある取り組みだった。【柿崎誠】

 10月24日、日がすっかり暮れ、肌寒くなった午後9時半ごろのこと。港南区の市営地下鉄上永谷駅近くにあるバス停から、1人の女性がバスに乗り込んだ。車内の運賃箱の前で前払いに手間取り、終点に到着してもなかなか降りようとしない。運転手の尾西政弘さん(54)は様子がおかしいと感じながらも降車を促すと、女性はバスを降りてゆっくり歩き出した。

 「あっ、そういえば昼に無線で聞いた人かもしれない」。尾西さんは終点のバス停を出発後、ふと思い出した。神奈川県内の自治体が運営する「認知症高齢者等SOSネットワーク」に登録された行方不明者の情報が、バスの無線を通じて各運転手にも共有されていたのだ。「緑色のカーディガン」。尾西さんは無線で聞いていた着衣の特徴が女性と同じだったことに気づき、慌てて営業所に連絡した。

 連絡を受けた助役の八木建二さん(52)はすぐに、女性の降りた終点のバス停周辺に車を走らせた。「外は寒くなっているから急がないと」。午後10時過ぎ、住宅街周辺を歩く女性を発見した。

 女性はその約10時間前、乗車したバス停から約3キロ離れた戸塚区内で夫とはぐれていた。保護から数日後、夫妻は営業所に出向き、2人に感謝の気持ちを伝えた。女性の手には転んだのか傷があったが、大きなけがはなかった。

 SOSネットワークは、行方不明の認知症の人を早期に発見し保護するための取り組みだ。県内の市町村や区で導入されており、港南区では2013年に始まった。行方不明になる可能性がある人の身体的な特徴などの情報を事前に登録し、実際に行方不明になったとの連絡が警察などにあれば、速やかに公共交通機関などにその情報が共有される仕組み。

 加えて、横浜市では登録者のうち希望した人に対しては、スマートフォンで読み取ると個人に割り当てられたIDが表示されるQRコード付きの「見守りシール」も配布している。例えば、行方不明者の衣服にシールが貼られていれば、見つけた人がQRコードを読み取ってIDを確認し、コールセンターにそのIDを伝えることで、個人が特定できる。

 港南区で保護された女性も数カ月前にネットーワークに登録していた。夫は女性とはぐれてすぐに港南区役所と警察に連絡し、その情報が尾西さんにも共有されて早期の発見につながったのだ。

 港南署は11月29日、尾西さんと八木さんに感謝状を贈った。村野英明署長は「高い志によって早期発見できた」と謝意を示した。2人は互いをたたえ合い、「女性を無事に保護できて良かった」と喜んだ。

 22年に全国で認知症が原因で行方不明になった人は1万8709人で、10年前からほぼ倍増。このうち死亡者は491人に上った。港南署でもほぼ毎日、認知症の行方不明者の届け出があるという。

 村野署長は「不明者を見つけても身元が判明しないケースがあるため、その意味でもネットワークの活用は効果的だ。またGPSタグや持ち物に名前や連絡先などを明記するなど、細かな配慮も早期発見につながる」と対策を呼びかけた。



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