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札幌・円山生活日記

「近美コレクション シャガール・イン・プリント/戦時下の北海道美術/この1点を見てほしい。」~北海道立近代美術館~

「北海道立近代美術館」では2月11日(土)から4月2日(日)までの予定で「特別展 サンリオ展‐ニッポンのカワイイ文化60年史」とともに「近美コレクション シャガール・イン・プリント/戦時下の北海道美術」が開催中です。同館が所蔵するマルク・シャガールの版画集『ダフニスとクロエ』『出エジプト記』『死せる魂』全162点を一堂に展示するとともに、北海道における戦時下の美術活動を対象とした研究の成果として同館が所蔵する当時に制作された北海道アーティストの作品が公開されています。

本日は「北海道立近代美術館」で2月11日(土)から4月2日(日)までの予定で開催中の「特別展 サンリオ展‐ニッポンのカワイイ文化60年史」に続いて「近美コレクション シャガール・イン・プリント/戦時下の北海道美術」の鑑賞です。同館は我が家から近いとは言え「サンリオ展」に来た良い機会なので併せて楽しませていただきました。


「北海道立近代美術館」東門。

「北海道立近代美術館」ロビー。中央には「特別展 サンリオ展‐ニッポンのカワイイ文化60年史」のシンボルとなるアート作品・増田セバスチャン氏/作の「Unforgettable Tower」が展示されています。「【近美コレクション】シャガール・イン・プリント/戦時下の北海道美術/この1点を見てほしい。」の会場は反対側です。


”愛の喜びを高らかに歌い上げ、20世紀美術の「詩人」と呼ばれたマルク・シャガール(1887~1985)。彼は油彩画の他にも、舞台装飾、壁画、陶芸、ステンドグラス等、いくつもの分野で創造力を発揮しました。特に版画は、30歳代半ばから最晩年まで60年以上にわたって手がけ、膨大な数を残しました。モチーフや表現内容の多彩さにおいて版画は油彩画に並ぶほどであり、イディッシュ(東欧ユダヤ)・ロシア・フランスという3つの文化のなかで形成されたシャガール芸術の多面性を、余すところなく伝えています。一方で、シャガールは版画において油彩画以上に軽やかさ、繊細さ、即興性を発揮しており、また、版画工房とのコラボレーションによる豊かな色彩など、版画というメディアの様々な特性を活かした表現を見せています。
 本展では、当館が所蔵する版画集『ダフニスとクロエ』『出エジプト記』『死せる魂』全162点を一堂に展示します。シャガールが描いた恋と苦難と魂の物語を、ぜひご覧ください。”

「シャガール・イン・プリント」の会場。マルク・シャガール『死せる魂』(1923年~27年)の版画を熱心に鑑賞する皆さん。

マルク・シャガール『死せる魂』より《ゴーゴリとシャガール》。 
風刺の効いた19世紀のロシアの物語『死せる魂』。第2章より《チーチコフの馭者(ぎょしゃ)セリファン》。白黒ですがシャガールの世界です。初めて「北海道立近代美術館」に来たのは転居前の観光途中でしたが、その際もシャガール関連の展示会を開催していた記憶があります。良いコレクションです。

著名な『出エジプト記』(1966年)より3章2節《茨の灌木の中から現れる神の使》。
同《ファラオに「私の民を去らせよ」と神の言葉を伝えるモーセ》。

同じく《タンバリンを持つアロンの姉妹、ミルヤム》。
『出エジプト記』より《モーセ達の旅路を導いた宿り場の上に現れるヤハウェの雲》。カラーになるとシャガールの世界観が際立ちます。「サンリオ展」とは明らかに客層が異なります。鑑賞者はシャガールファンが多いのでしょうか。


マルク・シャガール版画集『ダフニスとクロエ』(1957年~60年)より《ニンフたちの洞窟》。古代ギリシャの物語です。
同じく《バッカス神の社とそこに描かれているできごと》。


《パリの空に花》1967年。

1階の展示室奥が「この1点を見てほしい。」コーナー。5,800点以上の「北海道道立近代美術館」コレクションの中から1点を選び、多角的な研究を通して作品の奥深い魅力を紹介するコーナー。今回は伊藤隆介氏・作《こんなことは無かった》2012/2022年。 
手前のテレビや映画のセットのようなミニチュアのジオラマと、そのジオラマを撮影し拡大投影されスクリーンに映し出された映像という二つの要素からなる作品。
画面で大きく映し出されているのは、チラシや切手、フォークやドクロなどとともに昭和の時代を感しさせる菓子箱類。
その奥にはむき出しになった原子炉の模型。作品の背景には2011年の東日本大震災とそれに伴う東電福島第ー原発事故。小さなカメラがとらえる原子炉内などの「見ることの出来ないもの」を、独特の映像リアリティで見ることにより、人間社会の深刻さとその裏にあるおかしみを感じることができる作品だそうです。難解です。

「戦時下の北海道美術」のチラシ。会場は2階です。
“日中戦争の開戦(1937年)から太平洋戦争の終結(1945年)にいたる戦時下の時代。日本全体の世相が戦時色に染まりゆくなか、美術の世界もその例外ではありませんでした。北海道の美術家たちも同様に、故郷を懐かしむ兵士に向けて北海道の風景画を献納し、また郷土部隊の存在を記録・報道するために戦地へと赴いています。
 戦時下における全国各地の美術家たちの活動は、今日では多くの研究によって当時の状況が明らかになり、展覧会などで紹介されています。しかしながら、北海道における実態については、これまでほとんど研究や展示が行われてきませんでした。
 本展は、北海道における戦時下の美術活動を対象とした、初めての網羅的研究(『北海道立美術館・芸術館紀要第31号』掲載)の成果として企画されるものです。美術家たちが戦地で何を見、何を表現したのか、当館で所蔵するスケッチや展覧会出品作、献納画などを中心にご紹介します。”

会場の入口付近。
国松登《寝園獣走》1940年。舞台は朝鮮・李王朝の宮廷「昌慶宮」跡地の動物園。国松登氏の従軍画家としての体験によるものだそうです。


田部三重松《北洋の輸送船団》1944年。1944年に開催された「文部省戦時特別美術展(東京都美術館)」に北海道から出品された2品の一つとか。
同じく「文部省戦時特別美術展」に出品された上野美香《印度呱哇静物》。インドネシアのジャワ島やバリ島での購入物だそうです。

片岡球子《八風不動》1943年。氏が小田原で疎開生活中に出会った出征の時を待つ若きパイロットの姿だそうです。


従軍画家として制作した菊池精二《待機》1941年。

菊池精二《平原》1943年。「白川傷痍軍人北海道第一療養所(札幌市)」に献納した作品。

菊池精二《北鎮》1944年。ウルップ島に従軍した翌年に制作し「陸軍美術展(東京都美術館)」で朝日新聞社賞を受賞した作品だそうです。以上で本日の鑑賞終了です。時代も内容も全く異なる硬軟取り混ぜた多彩な美術展を一日で楽しませていただきました。仲々の充実でした。ありがとうございます。


美術館2階から正面玄関及びロビーを見たところです。

「近美コレクション シャガール・イン・プリント/戦時下の北海道美術」
開催期間:2023年02月11日~2023年04月09日([休館日]:月曜日)
開催場所:北海道立近代美術館(札幌市中央区北1条西17丁目)
主催者:北海道立近代美術館
料金:一般 510(420)円、高大生 250(170)円
※()内は、10名以上の団体料金。
※無料になる方/65歳以上、中学生以下、身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方(ミライロID利用可)及びその介護者(1名)など。
お問合せ:北海道立近代美術館
電話:011-644-6882
(2023.2.21訪問)

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