「札幌大通地下ギャラリー 500m美術館」は駅施設内の通路に設置されたギャラリーとしては日本最長の施設。地下鉄「大通駅」と「バスセンター前駅」に設けられた500mの展示コーナーに空間を生かした作品が並びます。 現在【第9回500m美術館賞入選展】と【500メーターズプロジェクト008「おこもろいな」—そんなこともあったね—】が開催中です。
本日は「札幌大通地下ギャラリー500m美術館」で【第9回500m美術館賞入選展】と【500メーターズプロジェクト008「おこもろいな」—そんなこともあったね—】の鑑賞です。サッポロファクトリーでの「モリ ハナ トリ タビ展」鑑賞の際に立ち寄りました。前者は現代アートの作品プランおよび企画プランのコンペティションでグランプリ2作品を含む最終選考に残った4作品の展示です。考えさせる作品なのですが難解な面がありビジュアル的にもあまり目立つ感じではないのが残念です。一方、後者は見た感じも楽し気で歩行空間を歩きながら鑑賞できるような作品でした。
地下鉄東西線「大通駅」と「バスセンター駅」間の地下通路にある「札幌大通地下ギャラリー 500m美術館」の錆仕上げした鉄のエントランス。札幌市が2006年度から「さっぽろアートステージ」の美術部門として11月限定で開設していた「500m美術館」を2012年に常設化したギャラリーだそうです。
【500m美術館vol.37 第9回500m美術館賞入選展】
【500m美術館vol.37 第9回500m美術館賞入選展】のチラシ。
“500m美術館では現代アートの作品プランおよび企画プランのコンペティション「第9回 500m美術館賞」を実施し、4組のアーティストが入選。2月12日から4組の入選者による展示を開催し2月14日には審査が行なわれグランプリ賞が決定。今回は2組がグランプリに選ばれました。”
第9回500m美術館賞 グランプリ《kugenuma(キオ・グリフィス+港 千尋)》氏の作品。横に長い作品なので全体が上手く撮れませんし少し難解でした。500m美術館賞グランプリ審査講評です。
三橋純予(北海道教育大学美術文化専攻教授)“今回のグランプリとなったkugenumaは、展示も大型写真コラージュによりスタイリッシュにまとめられており、QRコードを読み取り、スマホ等でダウンロードした音声を聴きつつ、歩きながら展示を見ていく体験的な作品である。 ”
第9回500m美術館賞 グランプリ《木村直》氏の作品。
500m美術館賞グランプリ審査講評;吉崎元章(本郷新記念札幌彫刻美術館館長)“ 木村直の作品は、写真を横一列に整然と並べることで、被写体となったハンセン病療養施設のあった緑地の垣根やフェンスの連なりを強化し、作品の前を日常的に人々が行き交う500m美術館だからこそ、その隔たりをより強く感じさせるものになっている。”
展示写真の一つハンセン病療養施設の周りのフェンスの写真。何気ない風景の奥で何があったのかを考えさせる1枚です。作者の木村氏は「国立ハンセン病療養所の記録と継承」と「見ない暴力」「見る暴力」を主軸に、写真・映像・インスタレーションを用いて制作を行うという東京藝術大学 美術研究科 先端芸術表現専攻 修士課程 在籍の方。「差別」という社会テーマの作品です。
入選《白川深紅》さんの作品。
審査講評;吉崎元章(本郷新記念札幌彫刻美術館館長)“ 白川深紅の作品は、巨大な布を天井からの吊るしと石の重みによって前後に波打つように張ることで、ボックス状の展示空間全体をフルに活用している。テンションがかかった布とそこに描かれたダイナミックな墨画、そして、石。物質性と身体性を充満させた力強さと、空間づくりの繊細さに魅力を感じた。”
作者本人による作品の解説です。見た目は布で水墨画を表現しているのかとも思ったのですが理解促進に役立ちます。それでも難解です。
入選《朴炫貞》さんの作品。
審査員評;三橋純予(北海道教育大学美術文化専攻教授) ”北大の撤去された橋のアーカイブプロジェクトの一環とした展示プランであり、他のドキュメント記録や活動とつながる興味深い企画で、公共性や地域性からも500m美術館の特性に適していることから最終展示に残った企画である。”
【500m美術館vol.36 500メーターズプロジェクト008 「おこもろいな」—そんなこともあったね—】
続いて「バスセンター前駅」側に設置されている【500m美術館vol36 500メーターズプロジェクト008 「おこもろいな」—そんなこともあったね—】のチラシ。
“札幌大通地下ギャラリー500m美術館は、2013年度より年度ごとに、アートマネジメントを学べるボランティアチーム「500メーターズ」を組織・運営しています。アーティストの制作補助や、設営作業・清掃など、500m美術館の管理運営をサポートしながら、毎月ミーティングを行い、500m美術館で開催する「500メーターズプロジェクト」の企画立案を行っています。”
その「500メーターズ」の第8期(プロジェクト008)の企画だそうです。
“第8期500メーターズは、コロナ禍の暮らしを見つめながらメンバーで話しあい、テーマを「接触できないけど、心と心が繋がっている」ような明るい気持ちになればと考え、アーティストと500メーターズが一緒に壁画を描く、壁画プロジェクトを企画しました。”
“コロナで、色んなものが変わった。生活も、常識も、生き方も。それでも、人とつながりたいという想いは変わらないことを、私たちはちゃんと知っている。私たちの「おもい」と「コロナ」を組み合わせた造語の『おこもろいな』を展覧会タイトルとした。映像作家として知られる斉藤幹男をお迎えし、500メーターズ全員のアイデアとタッチで描かれた作品をご覧いただきたい。いつか私たちが笑ってこう言えるように。「そんなこともあったね」(500メーターズ)”という作品でこちらからスタート。
たまに意味不明の絵が登場しますがコロナ禍の日常を明るいタッチで描いていきます。コロナ禍でも「人とつながりたいという想い」を表す『おこもろいな』が統一テーマ・・。
という訳で面白カワイイ壁画が続きます。
こちらで終了。もう少し行けば「バスセンター駅」です。
コロナ禍での—そんなこともあったね—のいくつかを紹介します。これはテニススクールはじめ運動施設の閉鎖。私が転居前に通っていたスクールも公営コートも長らく閉鎖が続きました。更衣室等を除きテニスコートは広いので「密」にはなり難いと思ったものです。
外出自粛で自宅で無為に過ごす毎日に飽きた方も多いでしょう。
手指の消毒。これは良い習慣で定着することで風邪もインフルエンザも少なくなったようです。今後も励行します。
これはちょっと意味不明。運動不足なので体操などで身体を動かすところなのかもしれません。
病床ひっ迫で自宅療養中の不安な患者でしょうか、それともワクチン接種後の副反応(高熱等)で休む姿かも。
ウェブミーティング。テレワークやウェブ会議等で働き方も変わっていくのでしょうか。「やればできるじゃないか!」と思ったことは沢山ありました。
PCR検査。唾液を採取して検査する方法では、すぐに唾液を出せない場合に酸っぱいものを思い浮かべると良いとアドバイスされたことを思い出します。
最後に「近いミライ」。“withコロナ”で経済社会活動の再活性化を図っていく時期が続くのでしょう。
【500メーターズプロジェクト008 「おこもろいな」—そんなこともあったね—】の作品は地下通路を歩きながら鑑賞するに仲々良いものでした。色々と思い出すことも又これが暫く続くのかと気が少し重くなることもありますが楽しい作品です。そして作品を見た人は皆感じるのでしょう。心の底から—そんなこともあったね—と笑える日が早く来てもらいたいものだと。ありがとうございました。
【500m美術館vol.37第9回500m美術館賞入選展】
会期|2022年2月12日(土)~4月13日(水)
会場|札幌大通地下ギャラリー500m美術館
札幌市中央区大通西1丁目~大通東2丁目
(地下鉄大通駅と地下鉄東西線バスセンター前駅間の地下コンコース)
(地下鉄大通駅と地下鉄東西線バスセンター前駅間の地下コンコース)
時間|7:30~22:00
主催|札幌市
企画運営|CAI現代芸術研究所/CAI03(有限会社クンスト)、一般社団法人PROJECTA
【500m美術館vol36 500メーターズプロジェクト008 「おこもろいな」—そんなこともあったね—】
会 期 | 2021年12月11日(土)〜2022年4月13日(水)
会 場 | 札幌大通地下ギャラリー500m美術館
住 所 | 札幌市中央区大通1丁目〜大通東2丁目
(地下鉄大通駅と地下鉄東西線バスセンター前駅間の地下コンコース内)
展示作家 | 斉藤幹男
主 催 | 札幌市
企 画 | CAI現代芸術研究所/CAI03、一般社団法人PROJECTA
(2022.3.9訪問)