The Alan Smithy Band

The band is on a mission.

The Night was Zero

2012年05月10日 | ASB活動日誌
前回までのあらすじ:
深夜すぎにようやく目的地のドイツN市に到着したひで氏。ネットにつながらないことを訴えにフロントに行くと親切な従業員がフロントの有線PCを貸してくれた代わりに自身は姿を消す。結果的に一瞬フロントを任されたひで氏の元に完全に怒ったアラブ人男性がフル装備のままエレベーターから登場、こちらに向かってずんずん来たー!

ああ。。。怒っている。
おれ、ここで働いてないのに。。。

ひで氏です。妙に冷めた感じでその向かって来るアラブ人男性を見ながらそんなことを頭の中でつぶやいていたが、さすがに彼が胸ポケットにすっと片手を入れた時は心臓がキュンとなった。あれ?そっち系?と思った。

これまでの私のブログを読んだ方はわかると思うが私ひで氏はこういった時、普段イメージしているよりももっと何もできず、何も言えない。
フリーズしてしまうのだ。こういう時にさっと身構えたりできる人ってすごいなと思うが、普段心がけていてもなかなかできない。まあ動物占いも子鹿だからきっと仕方ない。

これが俺が最後に見る光景なのか、と思った瞬間、彼が胸ポケットから取り出したのは小さめのタブレットPCのようなものだった。
ややアクセントの強い英語で

「無線がつながらないんやけど!」

と男性。。。。一緒かい!

あわや失禁寸前の恐怖から解き放たれた私は自分も同じ問題でこうなったことを説明もせず、少し気が大きくなったのか自慢げに彼に解説。今日、サーバーのメンテナンスがあってからというもの無線の調子がおかしい。このフロントのPCだけは有線接続だからもし急ぎの用ならこれを使うといい。。。まるで何年もここで働いているかのような口ぶりで語った。

ちなみに彼がなぜ帽子とコートを来ていたのかは最後まで不明のままだった。もしかすると彼も先ほど到着したクチで、着くなりこの問題に遭遇したのかもしれない。
とにかく彼は私なんかよりも切羽詰まった状況にあったようで、それならぜひそのPCを貸してもらいたい、ということだった。私はこの時点でメールもとりあえずチェックできていたので快く場所を譲った。そして自らは何も言わず、あたかもサーバーを見てくるという調子でその場から離れ部屋に向かった。

あの若者フロントマン、戻って来たらアジア人がアラブ人に変わっててさぞびっくりするだろうなあと思ったが、もしあのフロントマンが帰ってくるまでの間にあと2、3人ぐらい同じ問題で入れ替わったりしたらすごいな。。。いや、もしやするとあのフロントマンだって本当にフロントマンだったのかどうかも怪しい。。。彼も同じようにあそこに迷い込んだ客だったのかもしれない。。。これはまるで山深い寺で尼僧を斬った武士がその寺に住み着き、自らが尼になりすましていると数十年後また自分自身が武士となって斬りに現れたという手塚治虫「火の鳥」の珠玉の名作「異形編」のようではないか。。。

などと深夜特有の怖めの妄想を抱きながら部屋に戻ると長旅の疲れか途端に猛烈な眠気に襲われ、そのまま崩れるようにベッドに倒れこんだのであった。気がつくと朝の5時過ぎになっていた。

この日はミッション敢行のため朝早めにホテルを出なければならなかったのでちょうどいいと思い、シャワーを浴びたあととりあえずPCをつけてみると問題なく無線につながっていた。

その後朝食のためにロビー階に降りる時のエレベーター内で、昨日は気づかなかったのだが、地上階が「1」でなく「0」という表示であることに気づいた。そうかヨーロッパってこうなのか。。。と思うと同時に、何か昨日の夜のことがこのゼロという数字を見ていると全てが嘘だったのかのような不思議な焦燥感があった。

ロビー階に降りてみると7時と結構早めだったのにもかかわらずフロントはあの若者ではなく全く違う人だったし、朝食のビュッフェの場でも、その後ホテルを後にするまでの間も例のアラブ人男性を見かけることは一度もなかった。



次回、ひで氏初のスウェーデンへ。









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